FM香川 CMコピー大賞2016

I LOVE RADIO 786

総評

今回のグランプリは、唯一昨年に続いて協賛した〈しん治歯科〉が受賞しました。連続受賞の難しさだけではなく、これは画期的なことだと思っています。医療機関の広告は一般企業とは異なり表現に様々な制約を受ける、ある意味ではハンディキャップを伴った業種と言えます。そんな厳しい環境の中で、虫歯たちが一本締めをした音を聴かせながら“虫歯はこんなにはっきりと知らせてくれない”と伝えた昨年の大賞受賞CMは、ラジオの医療広告の新しい可能性を明示したとも言える素晴らしいコピーとして高く評価されました。

〈しん治歯科〉では、昨年を超えるCMは無理だろうと思いながら審査を続けていたら、目に飛び込んできたのが訪問治療をテーマにした「ウチの家」でした。在宅のまま歯の治療が受けられる高齢者社会にも相応しいこの取り組みを、社会性とユーモアを両立させながら、さらに高いレベルで表現したこのコピーを見ていると、コピーコンテストに応募してくださるクリエイターの可能性に限界がないことを痛感します。〈しん治歯科〉が昨年に続いてCMコピー大賞に参加した理由も、昨年のCMを高く評価した結果と伺っています。高くなっていくバーを次々とクリアしていくクリエイターの力量に敬意を表します。

準グランプリに輝いた〈濱川学院〉の「超えろ」も"一線を超えろ"という時代を反映した、若々しくリズム感のあるコピーが高く評価されました。CMとして組み立てられた時にどのような掛け合いになるのか、とても楽しみなコピーです。

今や全国のラジオ局で開かれているCMコピーコンテストですが、その魅力は新しい広告主のラジオメディアへの参加、そして課題に挑戦するクリエイターとの出会いにあります。 個々の評価は寸評に書きましたが〈香川手袋〉〈Clinicaみやむら〉〈三好エレベータ〉など、ラジオでは耳にする機会の少ない業種のコピーはとても新鮮でしたし、新しい気付きもありました。

CMは広告主の想いを表現した創作物です。今回の受賞CMがFM香川でオンエアされた時、協賛企業の想いが〔リスナー=消費者〕にどのように届くのか、送り手と受け手双方の評価がラジオのさらなる元気の源になっていきます。

協賛企業の方々、そしてコピーを投稿していただいた皆さん。選ばれたコピーがCMとして花開いていくところを温かく見守っていただけますようお願いいたします。

グランプリ

しん治歯科

「ウチの家」編鈴木 恵美(京都府) 作品を聞く
主婦A: ねぇ、ねぇ、ウチの実家、山奥にあるから、
クマが来たことあるのよー
主婦B: ウチも田舎だから、イノシシが来るわ
主婦C: ウチの家は、シカが来るわよ、電話したらね
主婦A・B: えっ、電話?
NA: 歯が痛くなったらお電話ください。
訪問治療も可能です。
しん治歯科
【 寸評 】
候補に残った3本ともレベルの高いコピーでしたが、決め手は身近に出没する動物で展開する、歯科の広告とは思えない意外性でした。環境の変化もあって、熊も猪も鹿も人家の近くに現れ、ニュースでも取り上げられます。それだけに「ウチの実家、山奥にあるからクマが来たことあるのよ」から入るコピーはリアリティがあり、イノシシやシカも“来る来る”と思わせておいて、シカは“電話したらね”と歯科の訪問診療に掛けた落ちに結んでくる展開はずば抜けていました。しん治歯科のキャラクターが鹿であることから生まれたコピーだと思いますが、それを知らなくても納得できるCMです。

準グランプリ賞

濱川学院

「超えろ」編中澤 弘(埼玉県) 作品を聞く
音楽: (雄大なイメージ)
男: 今を越えろ。
女: うん。
男: 自分を超えろ。
女: うん。
男: 限界を超えろ。
女: うん。
男: 一線を越えろ。
女: その言い方、イヤ。
NA: 文系と理系の壁を超えていけ。
新しい予備校のかたち 濱川学院
【 寸評 】
教師か先輩のような男性が女子学生に向かって、今・自分・限界を超えろと語り掛け、「うん」と肯定していきますが、最後に「一線を超えろ」と言われ「その言い方、イヤ」と反論する、今の時代を捉えたコピーが高く評価されました。会話の行き先は「文系と理系を超えていけ」と、濱川学院の目指すところにきちんと落とし込まれているので、メッセージも明快です。

協賛社賞

株式会社STNet

「歌声」編柴田 賢一(茨城県) 作品を聞く
女: ス マ ホ 代 ~ !
NA: スマホ代がこんな感じの人が、
STNetの格安スマホFiimo(フィーモ)にしたらこうなります。
男: ス マ ホ 代 ~・・・
NA: スマホ代が驚くほど下がります!
STNetの格安スマホFiimo(フィーモ)。
【 寸評 】
「スマホ代」の安さを、語るのではなく声の高いテノールと低いバリトンの歌声で比較した発想が頭抜けていました。ラジオからいきなり高音で「スマホ代~」と流れてくると、誰でも耳を傾けますよね。そこがうまいし、安いほうの声を、より低音のバスではなく耳障りの良いバリトンにしたところが、誇大ではなくスマートな企業姿勢に結び付いていると感じました。

一般社団法人 香川宅建

「読み応え」編糴川 航嗣(愛知県) 作品を聞く
(実況アナ) さあ、田中選手、慎重に芝を読んでいます。
(解説者) 優勝のかかった大事なパットですからね。
今度は月刊不動産ニュースかがわを読み始めました。
(解説者) 賞金で家を建てるつもりですね。
これは読みごたえありますよ。
(NA) 家、土地、満載。
月刊不動産ニュースかがわ。
【 寸評 】
ゴルフ実況中継のアナウンサーが「パットに臨む選手が慎重に芝を読んでいる」と発言し、解説者が「月刊不動産ニュースかがわを読み始めた。賞金で家を建てるつもりですね。これは読みごたえありますよ」とコメントする展開は、説明的ではあるものの一番課題に近いものでした。スポーツ中継はシーンをイメージしやすいことがメリットですし、ゴルフ愛好者と不動産購入者との相性の良さも感じます。

香川手袋

「おしゃれ番長」編青木 詩穂(京都府) 作品を聞く
女の子: 洋服ばっちりなんだけど、なんか違うよねー
帽子?
違う。
バック?
違う。
マフラー?
違う。
母親: あんた、手袋それしかないの?
女の子: あ~これか!!
NA: 手元もお洒落しませんか?香川手袋
【 寸評 】
電波メディアで手袋メーカーが広告主になったCMに出会った記憶はありません。それだけに斬新なアプローチを期待してしまうので、候補に残っていたシンデレラやイケメンが手袋を拾うコピーではなく、おしゃれ好きな女の子が自分のファッションにぴったりな手袋が無いことに気づく、このコピーが選ばれました。母親が「あんた、手袋それしかないの?」と発する一言で、手袋も大切なファッションアイテムであることが強調されています。

Clinicaみやむら

「鏡よ鏡」編奥田 広宣(東京都) 作品を聞く
女: 鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?
さぁ、答えなさい。
ほら早く。
ちょっと、見えてるんでしょ私のこと!
NA: いいえ、見えていません。
ご来院からお帰りまで、あなたのプライバシーを守ります。
完全プライベートの美容皮膚科、Clinica みやむら
【 寸評 】
「鏡よ鏡、世界で~」は良く使われますが、このCMは主人公の姿が鏡に映っていないことで、誰にも会わずに施術ができることを伝えています。なじみのあるストーリーから入り、途中で裏切る展開は、秒数の限られたCMではビジュアルイメージが拡がることと相まって効果的です。「ちょっと、見えてるんでしょ私のこと!」のコピーも、患者の不安にユーモアを含ませながら応えていて、良いアクセントになっています。

さぬき讃フルーツ

「ぼくの姫」編原 おうみ(東京都) 作品を聞く
男性: ぼくの姫。
あなたは何て可愛らしいのだ!
赤く染めた頬、まるまるっとした形、
それでいて上品で ・・・
奥様: あんた~、はよ苺の出荷行ってき~。
男性: は~い ・・・
NA: 愛情込めて作られた苺です。
美味しくて可愛い苺、さぬき讃フルーツのさぬきひめ。
【 寸評 】
生産者の男性が、自分の恋人のように苺に接するコピーで、愛情や可愛らしさ、美味しさを伝えています。ラジオからいきなり「ぼくの姫」と呼び掛けられると、女性は耳を引きつけられるでしょうが、男性はどう感じるでしょうか。そこを「あんた、はよ苺の出荷行ってき~」と妻が現実に引き戻すことで上手にカバーしています。

高橋石油株式会社

「リタリタソーラ」編浜中 将幸(和歌山県) 作品を聞く
SE: 子供たちの歌声(てるてる坊主の替え歌)が聞こえてくる。
リタリタソ~ラ リタソ~ラ~
あ~した 電気に しておくれ~
リタリタソ~ラ リタソ~ラ~
あ~した 電気に しておくれ~
NA: 高橋石油の自社ブランド太陽光発電
「リタ・ソーラー」
【 寸評 】
テルテル坊主の替え歌で、子供たちが「リタリタソ~ラ~ リタソ~ラ~ あ~した電気にしておくれ~」と歌いかけてきます。ゴロもいいし「天気にしておくれ~」を電気に置き換えたところも太陽光発電にピッタリです。きっと歩きながら歌っているのでしょう、子供たちの姿が浮かんできます。ビジュアルを思い描けることもリスナーの記憶に残っていく大切な要素です。

日進堂

「増えたもの」編松田 裕美子(埼玉県) 作品を聞く
男: きみと、日進堂の家で暮らし始めて、もう何十年になるだろう・・・
あれから、きみに増えたものがある。
女: シワでしょ?
男: いや、幸せだろ?
NA: 家づくりで、幸せづくり。
おかげさまで50年。
もっと、ずっと、日進堂
【 寸評 】
日進堂の家で暮らし始めて増えたものは“シワ”ではなく“幸せ”だと、夫が妻に語り掛けるほのぼのとしたコピーが評価されました。50年に及ぶ企業姿勢を求められた課題ですから、奇をてらわないベタな表現でも、ゆったり味わい深い会話で組み立てれば、心に届くCMになると思います。

株式会社三好エレベータ

「エレベータの性別は?」編塩田 泰之(東京都) 作品を聞く
女: エレベーターって、男か女か知ってる?
男: エレベーターに男女(おとこおんな)なんてないさ。
女: エレベーターはね、とっても繊細な機械なの。
優しくしてもらわないと傷つくの。女性と同じよ。
NA: やさしく乗ろうね。
安全はあなたの使い方とメンテナンスから
45年目の三好エレベータです。
【 寸評 】
エレベータを女性に例えたアイディアが評価されたCMです。確かに、身近な製品を性別分けしていくと新しい発見がありますね。女性のように繊細な機械だから、優しく扱わないと傷つくと言われると、なるほどと頷いてしまいます。CMを聴いた人はエレベータに乗る時、きっと優しく乗り込むと思います。

住宅型有料老人ホーム レインボー恵

「ベストマッチ」編狩野 慶太(東京都) 作品を聞く
※(20歳の娘と、70歳祖父の会話)
娘: だーかーらー、
唐揚げのそばに、いつもレモンがある!
柿の種の横に、いつもピーナッツがある!
みたいな事なんだよ、おじいちゃん。
祖父: うう・・・・・・全然わからん。
NA: かわりにご説明します。
老人ホームのすぐそばに医療機関があるんです。
住宅型有料老人ホーム レインボー恵。
【 寸評 】
老人ホームのすぐそばに医療機関があることを例えたコピーが評価されました。唐揚げとレモン、柿の種とピーナッツ。でも孫が必死に考えた例えをおじいちゃんは理解できず、ナレーションに委ねてしまいますが、前半の面白さでリスナーを引き付けていけるパワーを感じました。

特別審査委員

林屋 創一(はやしや そういち) 前 TOKYO FM 営業局専任局長 兼 CM制作ルーム部長
1972年(株)エフエム東京入社。番組制作を経て1978年から専門職としてCM制作に従事。
CMプロデューサー/CMディレクターとして現在に至る。
最近では、公文、セイコーホールディングス、三井住友銀行、三菱電機などのCM制作を担当。
ACC・グランプリ&総務大臣賞、ラジオ広告電通賞、JAA・消費者のためになった広告コンクールJAA賞、
日本民間放送連盟賞最優秀、アジア太平洋広告祭(アドフェスト)ラジオベストなどを受賞。

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