STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年04月10日放送分

大学生が子どもたちへと繋ぐお遍路の絵本物語

この春に香川大学を卒業した

上田佳奈さん、西崎莉央さん。

 

2人が大学の課題で作ったお遍路の絵本が

小学校や幼稚園などで配られることになりました。

今回は大学生が子どもたちへと繋ぐ

お遍路の絵本物語。

 

「おさるとおへんろ」ぶん:うえたかな

え:にしざきりお

《読み:西崎莉央さん》

あるところに、わるいことばかりするおさるさんがいました。

「きょうはなにをしてやろう」

きのうえでにやにや

むこうからおじいさんがやってきました。

「おや、まっしろなふくのおじいさんがきたよ」

おさるさんはきからおりて、

おじいさんのところにやってきました。

「やあ、おじいさん。いいてんきだね」

「こんにちは、そうだね。きもちがいいね」

おじいさんとあいさつをしたそのとき

「やーい。ぜんぶよこしやがれ」

なんとおさるさんはおじいさんのふくやもちもの

ぜんぶ、もってはしりだしました。

「ま、まってくれ」

おさるさんは、

おじいさんからうばったものをみにつけ

つぎはどんないたずらをしようかかんがえました。

すると

「あら、おへんろさん」

とこえがしました。

「おへんろさん、おつかれさま、おなかがすいているんじゃないかしら」

「いっぱいたべて、おいしいよ」

おにぎり、うどん、えびふらい、パン。

「なんだ?なんだ?」

おさるさんはなにがなんだかさっぱりわけが

わけかりません。

「おへんろさんって…」

おへんろさんについてかんえながらあるいていると

こんどはおばあさんにこえをけられました。

 

「おへんろさん、ここですこしきゅうけいしていきなさいな」

おばあさんはおいしそうなおちゃをだしてくれたので

やすんでいくことにしました。

「これからもがんばってね。」とはげましのことばに

おさるさんはげんきをもらいました。

するとまたまた

「おへんろさん」

とこえをかけられました。

「たくさんあるいてつかれただろう。まっさーじしてあげよう」

ごりごり、もみもみ、ぎゅー

「いたたた・・・でも、きもちちいい」

おさるさんはたくさんのひとにやさしくしてもらって

なんだかむねがあったかくなりました。

「でもぼく、おへんろさんじゃないよ。

これはおじいさんのふくなんだ」

おさるさんはみんなのやさしさに

うれしくてなみだがでました。

 

「どうしてみんなやさしくしてくれるんだろう」

そのときおぼうさんがあらわれ

「おへんろさんはね、おせったいをうけるんだよ。

おへんろさんは、とてもたいへんだから

みんながおうえんしてくれるんだ。

そのときにありがとうのきもちちをわすれてはいけないよ」

といわれました。

あったかいおせったいをうけたおさるさんは

いままでわるいことをしていたことがはずかしくなりました。

そして、おじいさんにきちんと、ふくをかえしました。

「おぼうさんがおしえてくれたんだ。ふくをとっちゃって

ごめんなさい」

するとおじいさんは、にっこりわらって

「おだいしさまにあえたんだね」

といいました。

~おしまい~

主に文章は上田さんが、絵は主に西崎さんが担当しました。

《上田さん》

「四国遍路友の会の会長さんである

松岡さんから

『多くの人に見ていただいた方がいいのではないか』と

お話しいただいて

そこで初めて、自分たちの捉え方で合っているのか

この絵本で大丈夫かな

というような不安はありました。

多くの人に見ていただけたらいいなという想いで

作ったものなのですけれども

本当に見ていただけるようになるとは

思っていなかったので

すごく嬉しかったです。」

 

《西崎さん》

「驚きと嬉しさですね。

制作した絵本が

そんなに多くの小学生や幼稚園児に

見てもらえると思わなかったので、

手助けを受けて絵本ができるというのが

嬉しいですし、驚きもありました。」

お二人はこの3月に大学の教育学部を卒業と

いうかたちになったのですけれど

素敵な成果ができましたね。

 

《上田さん、西崎さん》

「はい、そうですね。」

 

二人の授業を担当された

三宅教授にお話を伺います。

 

香川大学 教育学部 三宅岳史教授

「絵本があるだけでも良いのですが

学生が作ってくれて

しかも先生になる可能性がある学生が、

実際に絵本を作った彼女たちの

一人は本当に先生になっているのですが

文化を繋いでいく可能性があることは

意義あることかなと思っています。」

 

今回、絵本を制作した2人は県外からの出身者で

香川大学に来て授業を受けるまでお遍路については、

ほぼ知識も親しみがなかったと言っていました。

《三宅教授》

「香川県とか四国出身の学生でも

実はあんまりお遍路には学んでこなかった、

小学生の時に触れた気はするのだけれども

忘れてしまった学生もいます。

そういう意味では

私たちは学生が知らないことを前提として

新鮮な目で自分の目で発見していこうと

研究であったり制作物であったりに

繋いでくれていってくれているのかなと思います。」

 

今の大学生の目線で

お遍路やお遍路文化の課題は

どんなところに注目している様子なのでしょう?

《三宅教授》

「少子高齢化はあるのですが、

コロナで少なくなってはいるのですけれども

海外からの注目というところです。

今回の絵本も実は続きがありまして

英訳しようという話があります。

この香川大学の英語の領域の学生と

先生も監修してくださると

思いますけれども、英語の絵本ができたら

今度は大使館に配ろうという話が出ています。

地域だけでなく国際化へ向けての

繋がりができたらなと考えています。

 

学生が来てくれて、地域の人と活動して

地域の中でも維持活動に関わっている方に学んで

実際に生きている繋ぎの現場を体験できる場を

提供できているのですが

それはやはり地域の方々の

ご協力あってのことだと思っています。」

 

子どもたちが初めて触れるお遍路文化が

「さるとおへんろ」という絵本を通してなのですよ!

《上田さん、西崎さん》

「すごい!」

それぞれがお遍路文化を

次の世代に橋渡しをしていく役割も

担ったことになりますね、この絵本を通して!

《上田さん、西崎さん》

「うふふ、そうだと嬉しいです」

 

《上田さん》

「お接待という文化が

お遍路の中で素晴らしい文化だと思います。

そういった人の温かさに触れたり

一心不乱に巡ったりすることで

自分の心の中がスッと軽くなるようなものかなと

私はお遍路を捉えていて、

なので、何か悩んだ時だったり

人の温かさに触れたいときは

ぜひお遍路に行っていただける人が増えたら

いいかなと思います。」

 

お遍路というものに出会うことができたということは、

ここ香川に来た甲斐がありましたか?

《上田さん、西崎さん》

「はい、本当にそう思います」

《上田さん》

「この香川に来なかったら、

さらにこの香川大学に入っていなかったら

きっとお遍路についてこんなにも学ぶことは

なかったと思いますし、

自分がもし何か悩んだ時に

お遍路に行こうという

選択肢が持てなかったと思いますので、

香川に来られて良かったと思います。」

《西崎さん》

「私もいままでお遍路について

知らなかったのですけれども、

香川に来てこんな風に

お遍路に関わることができて学ぶことができました。

特に私がこの四国遍路で印象的だったのは

「お接待」という文化です。

「お接待」って、

誰かが無理やりさせている訳ではなくて

お遍路をされている方に対して

地元の地域の方が何かしてあげたいという

その気持ちをぜひみんなに持ってもらいたい。

香川だけじゃなく、四国の皆さんにも

そういったところを誇りにしてほしいなと

思いました。」

 

今日のゲストは

上田佳奈さん、西崎莉央さんでした。

 

今回は大学生が子どもたちへと繋いだ

お遍路の絵本物語でした。

番組は、radikoでも お聴きいただけます

YouTube配信もスタートしています。

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