STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年04月24日放送分

歩き遍路の疲れを癒す遍路宿物語

香川県宇多津町、昔ながらの美しい小町に

遍路宿「うたんぐら」があります。

今回は歩き遍路の疲れを癒す遍路宿物語です。

宇多津町の小町にある

遍路宿「うたんぐら」

入江徳子さんがご主人の入江宗徳さんと

遍路宿を始めたのは13年前。

大阪府泉大津市から、ご主人の定年を機に

宇多津町に移住されました。

お遍路宿「うたんぐら」女将 入江徳子さん

 

お遍路宿「うたんぐら」を始めようと思ったきっかけを

教えてください。

 

《入江さん》

「私がずっとお遍路をしていたのです。

バスツアーや車などを利用して・・・

歩きはしていなかったのですけれどもね。

主人が定年になって何もすることがない様子を見て

『あなた、盆栽とか釣りとかない?』と

訊ねても趣味がなくよい反応が得られなかったのです。

そこで私が

『善行宿』というものがあるということを

先達さんから聞いておりましたので、

『あなた、こういうものがあるのよ』というと

主人が『それいいな』と言うのです。

『でも、お金にならないのよ。しかも、こちらから

追い出しでむしろ費用を持ち出すくらいで、

儲かりはしないのよ』と告げても

『それでもいい』と主人が言うのです。

私は『したいな』という心があったから、

主人がオッケーだったら、

『しよう!』という感じでした。

まずは家を借りよう、どこか探そうという感じになりました。

「うたんぐら」は第78番札所郷照寺から

第79番札所天皇寺へ向かう、遍路道沿いにあります。

 

《入江さん》

「昔の遍路道ですね。

今は、国道33号線を行くお遍路さんもいらしたり

この道を通ったり、いろいろな道があるので

歩きやすい道や買い物しやすい道を選ばれます。

それでもこの「うたんぐら」の前の道が遍路道だそうですね。

第78番郷照寺から200メートルくらい東に来たところに

うちの宿があります。

もうちょっと田舎の方が遍路宿をするには良いのではと

思ったのですが、私たちも年を取っていくので

公共の役場や病院、買い物の場所など

自分が生活できた上でのお接待だと思ったので

この場所は町中だけれど、便利なここが良い。

主人といろいろ考えて、ここにしようと決めたのです。

《入江さん》

2010年の2月から始めたのですが、

その3年前に第一次定年で退職金もその時に頂けて

60歳になったら、すぐにこちらにこようと

3年かけてお掃除し、宿にとって不都合なところを直したりしました。

3年間準備をして、主人は1月16日が誕生日でしたので

1月いっぱい仕事をして、2月までが仕事終わりでしたので

2月終わってすぐに

私たちももう

『もうお遍路さんが待ってくれている』

という感じがして、すごくワクワクして

早く行かないとみたいな感じで始まりました。

始めた頃は、歩いているお遍路さんも多かったので

『こんなのをしているのです』と

遍路道まで出ていって配ったり

ホームページを作ったりもしました。

でもなんだかその時はお遍路さん自体も多かったので、

あっという間にお遍路さんが泊まってくれるようになりました。

あまり知られていないはずなのに、1年で500人くらいの

お遍路さんがいらっしゃいました。

 

《入江さん》

郷照寺まで第77番の道隆寺から2時間かかるのです。

そうしますと道隆寺で夕方5時に納経し2時間歩いて

こちらにいらして

朝、郷照寺にお参りしてそして行くという方もいらっしゃいます。

 

お遍路さんは計画して、泊まりにいらっしゃるのですか?

《入江さん》

歩きの方は、自分の体調で

『今日はだいぶ歩ける』とか

『今日はちょっと昨日眠れなかったから歩けない』

とかがあるのです。

なので、私たちも午後3時までに予約をしてくださいと

言っているのです。電話をいただきたいと思っていて。

最初は朝食もお作りしていましたので、

でもちょっと用事で出かけて戻ると

お遍路さんが宿の玄関のところで座っていらっしゃいます。

電話がない人がいっぱいあって、

もし電話を頂けていたら、早めに用事を済ませていたのにと。

電話がないので

「今日はお遍路さんがいらっしゃらないわ」と

思ってゆっくり帰ってくると

玄関のところにお遍路さんが座っていらして、

よく慌てました。

 

遍路宿「うたんぐら」は、主に歩き遍路の方々に知られています。

《入江さん》

『ここはもういっぱいです』と断られたときに

次の宿に行こうと思っても

歩き遍路の方は疲れて、体力も終わりになっていらっしゃるので、

車で回っていらっしゃる方であれば

シュッと5分ほど車を走らせれば

どこにでもホテルがあったりします。

だからこの宿は歩き遍路の方をメインとしています。

いっぱいになって、

歩き遍路の方を断らないといけない状態に

なってはいけないと思っています。

特に歩き遍路さんが泊まるところにご苦労されるというのは、

身をもって目の前でご覧になってきていらしたからですね。

 

《入江さん》

「そうですね。

だから私たちはバスを降りてお参り先に

長い石段があっても、

『わー、大変たいへん』

と思うけれども

私たちはその大変なことをしても

お参りあとバスにボーンと座れば、

次また連れて行ってくれるのです。

出も歩きの人は、座ってもまた歩いていかなければ

いけないのですもの。

私は

『(歩き遍路さんは、)すごいな』と思って

それは、頭が下がる思いでした。

 

お訪ねしたこの日、「うたんぐら」の談話室には

一息ついて足を伸ばすお遍路さんお二人がいらっしゃいました。

何回くらい、まわっていらっしゃるのですか?

(歩き遍路をされている大下利雄さん)

「私は28回。歩きです。

私ね、車も免許証もないので歩くしかないのです。(笑)

正直言いますと、歩くしかないのです。」

 

もう何年くらいされていますか?

《大下さん》

「15年目、53歳の時から歩いている。

今年で68歳だから、15年間。

私は毎日、

角打ち(かくうち)

していますから

お遍路さんの数がわかります。

だいたい15人くらいいらっしゃいます。

これは多いのですよ。

行きたくて、行きたくて、ウズウズしていた人たちが

わーっと来たのです。

今日はどこからどこまでいらして、

この「うたんぐら」にいらしたのですか?

《大下さん》

今日は鬼無から、ここまで来ている。

明日、鬼無まで行って白峰寺と根来寺登って

国分寺へ降りてここに帰ってくるのです。」

 

帰ってくるのですか?

《大下さん》

「帰ってくる。

ここお安いでしょう。

でね、今行きつけのところは、やっていないのよ。

ここを拠点に変則的に(お遍路に)行くのです。

今、(歩き遍路は)みんなやっているのです。

ほとんどの人が、

高知でもやっているのです。

遍路宿がないのです。もうずっと

だから、どこか一カ所泊まって連泊しておいて

こういって戻って、行って戻って、こんなことをしている。

そうしないともう宿がないのです。」

 

では、「うたんぐら」に何泊ですか?

 

《大下さん》

「私は初めて3泊予定していますね」

(広島から来て宿泊される佐藤寛さん)

「広島から。

私の友達がね、ここへ何遍か泊まっているので

それで勧められて来たのです。

歩き遍路です。

まあ、飛ばしているけれどね。

山の方には登らない。

所どころ、いいとこ取り。

なるべく海沿いをね、歩いているのです。

納経帳をみると、随分白紙がありますよ。

だからお寺に行くと、(お寺の方が)苦労されている

飛び飛びになっているから。」

《大下さん》

「それはね、煩悩が残るよ。

お家に帰って、(納経帳を見て)ああ、空いてる。

ああ、空いてる・・・

そうしてあなたは、それを貰いにまたやってくるよ。」

《佐藤さん》

「そういうことは、在り得るかもしれないですね。」

《大下さん》

「ここはね、四国で一番良い!

間違いない!

ここだけは自信もって言える。

(紹介した)誰もが良かったと言ってくれるから。

女将さんの気立てがいいから。

これが一番じゃないですか!

遍路というものは、(宿に)入ってきたときの

第一印象ですよ。

これが一番。疲れが取れる。

こちらの宿は、本当にほっとするものね。」

今回は、歩き遍路の疲れを癒す遍路宿物語でした。

 

番組は、radikoでも お聴きいただけます

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