STORY 八十八

毎週日曜日9:00~9:15

それぞれの人や文化が持つ多様性。
未来のために今、それぞれの想いを受け入れるやさしさが、求められています。
古来よりうれしさや悲しみ、時にはその人の人生そのものを受け入れてきた四国お遍路には、
過去・現在、そして未来に続いているやさしさがあります。
これは、そのやさしさを探しに行く八十八という名の物語。

STORY 八十八

STORY 八十八

毎週日曜日 9:00~9:15
提供 株式会社アイム

2022年08月14日放送分

さぬき市造田にある「萩地蔵休憩所」の物語

今回はさぬき市造田にある「萩地蔵休憩所」の物語です。

造田宮西地区で古くから農業を営む飯田栄一さん。

飯田さんが代表を務める桃農家の産直

「飯田桃園」は6月から9月の間、季節を追って

品種の違う旬の桃が買えるとあって地域で良く知られた場所です。

《飯田さん》

「県道でいえば、志度山川線。

昔の道はもう一つ、その斜めに通っている道が昔の遍路道です。」

 

実のなる時ももちろんですが、花が咲くときもこれは綺麗ですよね。

 

《飯田さん》

「桃が咲くとき私はいつも、天女が舞う姿を想像するのです。

色と霞がかかったように、ぼうっとなっている感じ。

それから風が吹いたときに空に舞い上がって

花吹雪のようになる有様とか・・・」

多くのお遍路さんがここの街道を通られるときに

その景色をご覧になっていくと思います。

《飯田さん》

「はい。私が小さい頃は、白装束の人が

チリンチリンと春と秋のあのころに

行列ができていました。

それから、そういう人は減ってきて

車で往来ができるようになって、最近では外国の方が

増えてきました。

それがコロナ禍になって、ぱたっと止んだのですけれども、

だんだん国際的になってきたなという感じは受けていました。」

 

飯田桃園の直売所の隣に、お遍路さんの休憩所があります。

《飯田さん》

「休憩所はこのお地蔵さんを地域の人が昔から祀っていた建物なのです。

作り直したのは、私が四国遍路を回って

徳島県のある川沿いで、こういう休憩所があったのを見て

ここもそんなように改造したらいいなと。

見通しも良くして、泊まれるようにしました。

ここ昔は北側の窓だけの閉鎖的な

地域の人が拝むだけのお地蔵さんの建物だったのです。

それを開放して、お遍路さんが立ち寄れるような

場所にしました。

土足ではいれるように、

泊まる人はここに泊まれるように。」

腰掛けることもできるし、体を伸ばして寝ることもできるのですね。

 

《飯田さん》

「ここの下を砂にして、足に優しいように

この砂もこの山の池にある池の砂です。

昔から拝んできた建物を私が受け継いで

するようになったので、こういうふうに

四国遍路を回ったおかげで改造できたということです。」

 

飯田さんが四国遍路を回るきっかけとなったのは、

栄一さんの父、保さんの願いだったそうです。

《飯田さん》

「親父も一生に一度は(お遍路に)行きたいと言っていたのです。

戦争が終わった時、農業としては自作農です。

だから(父は)自分で耕して、暮らしを立てていくので

農作業がいっぱいあるから、

なかなか歩いての遍路は無理だったのですね。

「一生の間に一度は行きたい。いつかは行きたい」と

親父は言っていたのです。

家は真言宗だったので、

(お遍路は)真言宗の弘法大師にまつわるものでしたから

行ってみたいというものだったと思います。

親父が行きたかったことを代わって

行ったらいいなと。

一周忌までの間で行ったらいいのではと思い立ちました。」

 

《飯田さん》

「家の仕事があるので、雨の日になったら出かける。

ただ高知だけは遠いので、宿泊を2泊したのかな。

それで全部回り切って、それで親父の背広を着たりして・・・」

じゃあ、ご一緒にですね。

 

《飯田さん》

「そうです。一緒に行くつもりで

区切って、今回はこことここ。

だいたいは順番を追っていきました。」

 

その期間はどのくらいだったのですか?

《飯田さん》

「全部で合わせたら3カ月くらいになったかな。

行ったり来たりで

家内と「行こう」と連れ添って行きました。

「今日は雨だ、明日は雨だ。」とバーッと出かけて

ただナビがないから家内がナビ替わりで

横で(家内が)地図を見ながら、(わたしが)運転して

そしたら地図の見方によって通り過ぎたりするのです。

そしたら夫婦喧嘩!(ははは)

そんな旅でした。」

 

飯田家に伝わるお遍路さんをめぐるお話があります。

《飯田さん》

「明治時代には「3回(お遍路を)回った人がいる。」という

言い伝えがうちにはあったのです。

(明治時代に)子どもができなかった時があって、

願掛けで親が回ったのだというのですね。

3回まわったというのです。

それでこれが仏壇にあったのですけれど、何かわからなかった。

(私の)親も何も言わなかったので、

意味が分からなかった箱だったのです。

四国遍路を回ってから、ガタガタ片付けていたら

ポロっと出てきて、それが当時の御朱印帳だったのです。

その時に背負っていた石がある。

お地蔵さんを彫った石があり、それを背負って

(四国遍路を)回ったという話なのです。

子どもを授けてくれる地蔵さんだと思うのですが、

それを背中に負ってずっと回った。

それが舟形の石です。

結構重いのです。

(石の)先が欠けているところを見ると

おそらくどこかで(背中から)落ちて

欠けたのだろうと思うのです。」

 

もしかしたら、どこかで転んだり

したかもしれないのですね。

 

《飯田さん》

「ええ、たぶん縄が切れて落ちたのではないですか。」

 

その石を背負って八十八ヶ所を?

《飯田さん》

「そうです。それを3回まわったのだから

大したものだと思います。

それで私が回ったのが(その明治期に回られた人から数えて)

100年。

102~103年目くらいだったのです。」

石仏を背負い3度、八十八ヶ所を回った先祖から

100年の時を経てお遍路をすることになった飯田さん。

《飯田さん》

「私が受管する前に

お地蔵さんがあったのです。

三方をトタンで囲まれたお地蔵さんの建物だったのです。

それが四国遍路を回った時に徳島県のあるところで

(建物の)周りが開放的な休憩所を見つけたのです。

「これいいな」と帰ってきて改造して

今の休憩所にしたのです。」

それはご自身が四国遍路を回られて、感じて

そして作られたのですか?

《飯田さん》

「そうです。

自由に使ってもらえるところにしてみたいという

感じですね。」

萩地蔵休憩所には、石仏が祀られています。

《飯田さん》

「萩地蔵と言いますけれど、

弘法大師がこの道を通った時に彫ったという

謂われなのです。」

 

木のお地蔵さんがあったと伝えられているのですよね。

《飯田さん》

「そうです。

志度寺のご本尊と同じ共木(ともぎ)で作られていたという

話が残っています。

その次の話としては、どこかが

「貸してくれ」と言って借りていって

なかなか返さないのでこの地域の人が怒って

借りたところに大勢の人が詰め寄ったという話が

残っています。

「返してくれ。なぜ、いつまでも返さないのだ」と。

で借りたところが石の地蔵を持って返してきたという

話があります。

で、現在が石の地蔵さん。」

 

そのものの弘法大師が彫られた木の仏像でなくて?

《飯田さん》

「そうです。石の地蔵さんになって帰ってきた。

その石の地蔵さんもよく見ると

頭の部分と胴体の部分と

石の質が違うのですよ。

首のところで石膏で巻かれているのです。

昔は手で作っていて

返してくれと言われても、時間的に間に合わないので

いろいろ寄せ集めて作ったやつを

持ってきているのではないかなと思います。

身体は弘法大師、頭はお地蔵さん。」

 

それでちょっと不思議な感じがするのですか。

一見「お大師さんかな」と思うのですけれど

ちょっと感じが違ったのですよね。

《飯田さん》

「(胴と頭が)違うし、石の質が違います。

大慌てで誂えたのであろうと。

首に涎掛けが巻かれていたのです。

それで分からないようになっていたのですけれど、

私が移転するときに(涎掛けを)除けたら

そのようなところが出てきました。

たぶんそれでみんな怒ったのだろうと

思いますけれど、

昔、仏像関係は(地域の人たちも)大事にしていましたから。」

この土地に伝わる物語。

そして、お地蔵さんなので飯田さんもやはり大事に

伝えていきたいと・・・

《飯田さん》

「そうですね。

未来に繋がって、ほのぼのとした地域性。

それが在ったらいいなと思っています。」

 

今回はさぬき市造田にある「萩地蔵休憩所」の物語でした。

番組は、radikoでも お聴きいただけます

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