12月21日/丸亀市・本島 若者が住みたいと思える笠島に「KASASHIMA STUDIO」.

江戸後期から昭和初期の歴史的まち並みが残る港町。丸亀市・本島の北東部に位置する「笠島地区」。昭和委60年4月に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、今年40周年を迎えました。
そんな笠島地区に残る江戸時代の民家「豊島邸」を舞台に活動する、香川大学の建築学生たちが中心となって発足したプロジェクト「KASASHIMA STUDIO」は、今年度、丸亀市が募集した提案型協働事業にて「伝統的建造物の保存活用」のテーマで採択されました。
この秋、本島も会場の一つとなっていた「瀬戸内国際芸術祭2025秋会期」に合わせ、「豊島邸」を改修・展示空間を設計し、一般公開しました。
そんな「KASASHIMA STUDIO」の中心的存在として活動している香川大学 大学院 創発科学研究科 博士前期課程1年 渡邊海里さんにお話お聞きしました。
まずは、プロジェクト名の「KASASHIMA STUDIO」の由来について
渡邉さん「建築系の事務所って「◯◯スタジオ」というところが多く、カッコいい!というところから笑 ローマ字表記なのは、昔ながらの中に若い知識を取り入れたい、また、『かさしま』なのか『かさじま』なのか漢字だと読み方が分からないかもしれないので、世界の人が読めるようにしました。」

江戸時代の建築とされている「豊島邸」は、当時、廻船業を営んでおり、咸臨丸に乗船した水主(水夫)もいる船乗りの家系とのこと。長らく空き家となっていましたが、笠島地区の中でも、敷地も屋敷も大きい特筆すべき建物です。

「KASASHIMA STUDIO」が目指すのは、「豊島邸」を中心に、笠島地区における若者の関係人口が増えること。
渡邊さんは初めて笠島地区を訪れた時、美しい街並みに感動しつつも、人の生活が見られないところにギャップを感じたそう。
きれいなまち並みで写真が撮れたり、非日常が味わえるのは良いことだけど、それはあくまで観光客目線。「生活する人の息を感じられてこそ、街の価値なのでは」
そういった最終的なゴールから逆算して瀬戸芸の展示テーマを導き出しました。
街の良さを知ってもらうには、まずは家の良さから。伝統的な日本家屋の形式が残っていて、今の住宅ではあまり見られない建具や畳の空間にフォーカスを当て、展示空間を設計していきました。

笠島地区の重要伝統的建造物群の中でも、最も海沿いにある「豊島邸」
海岸沿いが埋め立てられる前は、北側にあるこの窓を開けたらすぐ海で、ここから釣竿を垂らして釣りを楽しんでいたそう。
渡邊さん「本当にずーっと見ていたい景色。昔の人も同じように海を眺めていたのかなとか思いを馳せてしまいます。瀬戸芸期間中もお客さんがいない間は、ぼーっと眺めていました笑」

プロジェクトを実施するにあたり、協賛依頼やスポンサー活動、クラウドファンディング、地域の人を対象としたワークショップを開催するなど、学生ならではの柔軟な発想と行動力で、企業や地域を巻き込んでいきました。
そんな「KASASHIMA STUDIO」の活動初期から、お力添えくださったのが、NPO法人本島町笠島まち並保存協力会 会長の三宅邦夫さんです。
協力会は、笠島地区固有の歴史的な伝統美観を保存し清潔な住環境を後世に継承するとともに、福祉の増進・社会教育の推進・文化の向上などを図り、合わせて広く観光に寄与することを目的に2000年に設立されました。
三宅さん 「本物を残すということが私の活動のキーワード。家というのは生業のために作られている。豊島邸は、建てられた当時、廻船業をやっていたから、多くの荷物を扱っていた。そのため、玄関口の上は天井が開いて、滑車で荷物を入れられるようになっている。そういった機能をもった建物、本物をそのまま残すのが、文化財の保存維持で最も大切なんです。笠島地区で活動される方には、そういった意識を持っていて欲しいと思っています。」
笠島地区や豊島邸についての情報はもちろん、電気も水道も通っていない豊島邸で活動する上でのインフラなども支えてくださいました。
渡邉さん 「本島に来て、人生で初めて井戸で水を汲みました(笑)その釣瓶も三宅さんが貸してくださって。井戸で水を汲んでいるとお隣のお家の人が出てこられて、何しているの?と会話が生まれたり。なかなかこういった経験はできないですし、豊かな暮らしってこういうことなのかなと感じました。」
現在は、子供が1人もいない笠島地区。
三宅さん「家屋の総数は86戸。そのうち居住できる家屋は48戸で実際に居住しているのが20戸で、世帯数で言うと17。そして、私のように多拠点居住が6戸。つまり、半分ほどの23戸しか使われていないんです。だから、渡邉さんのような大学生ら若いパワーが入ってきてくれることを集落の人は歓迎していますよ。」
写真撮影時のエピソード
岡 「おじいちゃんの家に遊びにきた孫のようですよ
」
三宅さんのご年齢を聞いた渡邉さん「うちのおじいちゃんと同い年です
」
三宅さん「うちの孫より若いよ
」
といった微笑ましいやりとりも。

渡邉さん「KASASHIMA STUDUOは、今年で終わりではなく、2028年、2031年と続く瀬戸芸のサイクルに合わせた6年間のプロジェクトとして笠島地区で活動する予定です。まず3年後には、豊島邸をサテライトキャンパスとして使えるような状態にしていこうと考えています。」
ご自身は就職活動真っ只中。今後について伺うと。。。
「ずっと都市開発の分野に進みたいと思っていたのですが、今回のプロジェクトに関わったことで内装設計に興味が出てきました。最終的には、出身地である岡山や香川など瀬戸内に帰ってきて、こういう海が近い港町で仕事ができたらいいなと漠然とですが思っています。」
KASASHIMA STUDIO について詳しくは、KASASHIMA STUDIOホームページ / 豊島邸ホームページ をご覧ください。
☆本島へのアクセス情報☆
丸亀港から本島汽船のフェリーもしくは旅客船にて、約20分から35分。
時刻表など詳しくは 本島汽船のホームページ をご覧ください。
丸亀市では毎月20日を「航路運賃無料デー」とし、丸亀港/児島港〜市内5つの離島を結ぶ3つの航路で旅客運賃が無料に。本島・広島の各港には、地元に縁のあるお土産が販売されています。
この番組は一週間の間、 radiko でもお聞きいただけます。
また、AuDee では、過去の放送をアーカイブしています。
あなたの島旅のお供に。。。

香川しまびより