10月26日/「残された道具が語ること」安岐理加さんの展示から.
土庄町豊島、家浦港から歩いて数分の場所にある「てしまのまど」へ。
今年10月10日に12年目を迎えたこの場所では、現在、企画展「残された道具が語ること Tools left on the Family」が開催されています。

企画展を手がけた「てしまのまど」代表で美術家の安岐理加さんにお話をお聞きしました。

かねてから興味のあった民俗学を作品として表現している安岐理加さん。2012年、生まれ育った小豆島から祖父母の住んでいた豊島の家へ移住し、その建物をアートプロジェクト「てしまのまど」として開きました。と同時に、ここに残された道具を「生活造形」と定義してリサーチを続けています。

(写真:安岐さんのお祖父さん)
「残された道具が語ること Tools left on the Family」では実際に安岐さんのお祖父さんが残した漁のための道具を解説付きで展示。また、漁師さんにヒアリングした際の動画を上映しています。



手持ちの網や海に延べて使う大きな網、漁網を編むための道具、長さを測るための道具。一見、どんなふうに使うのか、なんのための道具なのかがわかりません。安岐さんは近所のおじいちゃんやおばあちゃんに聞き取りをしながら、道具について調査を行っていますが、中にはみんなの言い分が違っていて、結局何の道具なのかわからなかったこともあるそう。

懐かしい箱に入った小さな道具たち。中にはお祖父さんが釣りや漁で使っていた仕掛けが入っていました。1個だけプラスチック製の仕掛けが。それ以外は手作りしたであろう、竹と糸で作った仕掛けばかり。プラスチックの仕掛けを見本に、寄せて作っていることがよくわかる造形物です。

こういった道具について聞き取り調査をしてみると、その頃の生活やその頃獲っていた魚のこと、日々のこともひっくるめて話してくれると安岐さん。『道具はいろんな記憶を私たちに届けてくれるもの』なのだという気づきから、ますます興味を持ったそう。

中でも安岐さんが一番興味を惹かれたのが延縄漁の網。今年の瀬戸内国際芸術祭2025春会期の瀬居島会場では『その島のこと an Island』と題して、お祖父さんの残した網を通して見えてきた瀬戸内の暮らしを展示されていました。

(美術家 安岐理加さん)
「漁具を調査する中でわかってきたのは、瀬戸内の漁業のターニングポイントは高度経済成長期ということ。大体その頃に海の砂をたくさん取ったり埋め立てしたことで海の魚種が変化したようです。それでも島の漁師たちは魚を獲る。獲れなくなっても諦めず、そこにチャンネルを合わせて道具を開発していった。それを言葉からも道具からも感じますし、その話を伝えるとみなさんワクワクしてくれます。」
誰かが残した道具が語り出す、かつての島の風景。
それを覗きに、「てしまのまど」へ足を運んでみませんか?
「残された道具が語ること」
会場/てしまのまど(土庄町豊島)
開室時間/9:30~17:00
入場料/600円(島民の方は入室無料)
※パン・ケーキの販売あり。テイクアウトのみの方は入場料なしで入店できます。

香川しまびより