FM香川 CMコピー大賞2023

I LOVE RADIO 786

特別審査委員

中村由美 株式会社エフエム東京 コンテンツビジネス本部 ビジネスソリューション局 営業推進部CMルーム
TOKYO FM社員として、2002年~2010年までCM制作ルームに配属、また2018年より再び配属。
CMの企画プランニングからディレクションまでCM制作全般を担当。
CMプロデューサー/プランナー/ディレクター。

総評

今年もたくさんの方にご応募いただき、ありがとうございました!

ラジオは「情感のメディア」と言われます。いかに、聴く人のイマジネーションを刺激して、心を動かすかが勝負!説明するコピーより、感じさせるコピーが、威力を発揮します。

その点で、みごとに審査員のハートを掴んだのが、グランプリに輝いた丸善工業「ふと目が覚めたら・・・」篇。遠い夏の幸せなシーンを、たった1行で切り取っただけ。なのに、1摘のしずくから波紋が広がるように、聴く人の想像を広げるパワーがあるのです。ラジオの特性をしっかり把握した上で、この引き算のコピーを書いたとしたら、なかなかのツワモノです。

準グランプリに輝いたのは、NEWM「コンビニ」篇。環境問題は、キレイごとの啓蒙メッセージが多くて、少々、ウンザリですが、この作品のアプローチは新鮮です。プラスチック削減にマジメに取り組む主人公が、「私だけ頑張っても限界がある!」と、コンビニのレジで思い切り叫ぶのです。これにはコンビニ店員もリスナーもタジタジ(笑)。キレイごとじゃ変わらない!だから一緒に立ち向かおう!NEWMの「本気」と「熱」を伝える作品です。

★来年も皆様のチャレンジをお待ちしています★

このコピー大賞の審査で、今までに無い新しい発想に出会うとワクワクします。ぜひ勇気をもって「王道フォーマット」から、はみ出してみて下さい!たとえば「昔話や歴史上の出来事のパロディ」や「ダジャレ」は、王道中の王道。もちろん普遍的なパワーはありますが、発想が広がらないのが難点です。

CMの使命は、商品や企業の「魅力」を伝えること。まずはできるだけ多くの角度から商品を見つめてみて下さい。その商品にしか無い魅力は何か。誰をどんなふうに喜ばせるのか。逆にその商品が無かったら世の中はどうなってしまうのか。紙いっぱいに書きだしてみてください(トップコピーライターは軽く1000は書きだすそうです)。書きだした言葉の地図から、必ず、新しい道が見えてきます!来年も、皆様のチャレンジを、審査員一同、心よりお待ちしています。

グランプリ

丸善工業株式会社

「ふと目が覚めたら・・・」篇安藤 一明(長野県)作品を聞く
【男の子】 ある夏の夜。(SE:夏の虫の声など環境音)
ふと目が覚めたら、
ママがうちわで僕を扇いでくれているのに気づいた。
そんな優しいママは素敵だけど、うちわの絵柄も素敵だった。
SE: (風鈴の音)
【女NA】 記憶に残るオリジナルデザインのうちわを作るなら、丸善工業。
【 寸評 】
最初の1行で、思い出のスイッチが押されました。夏の夜の、ほのかな蚊取り線香の匂い、ムシムシした湿度。五感の記憶が呼び覚まされました。「オリジナルうちわ」は、単なる販促グッズではなく、人の記憶に残るアイテムであることも示唆していて、うちわ業界で働く人々のモチベーションも上がりそう。いろんな人に「いい風」を贈る作品です。

準グランプリ賞

株式会社NEWM

「コンビニ」篇田村 波瑠子(東京都)作品を聞く
SE: 店内雰囲気~レジのピッという音
【男店員】 レジ袋要りますか?
【女性客】 いりません。
【男店員】 ストローおつけしますか?
【女性客】 いりません。でも、私だけじゃ限界ありますよね?
【男店員】 えっ?
【女性客】 プラスチック問題。
一緒に、世界の問題に立ち向かいませんか?
【男店員】 は、はい
【NA】 リサイクルプラスチックのNEWM。
【 寸評 】
コピーを読んで、真っ先に思い浮かんだのが、スウェーデンの環境活動家・グレタさん。このCMも、彼女のような熱量をもって、プラスチック問題を問いかけています。熱量のあるメッセージとともに、NEWMが熱い志を持った企業であることが伝わります。NEWMの「顔」が見えてくる、ブランディングにも寄与するCMだと思います。

協賛社賞

香川県危機管理総局くらし安全安心課

「約束」篇林 大智(愛知県)作品を聞く
(SE 朝の玄関先~スズメのさえずり)
【子供】 では、もう一度
【父親】 横断歩道は歩行者絶対優先!
【子供】 次!
【父親】 安全速度を必ず守る!
【子供】 次!
【父親】 シートベルトは全席着用!
【子供】 守れますかぁ?
【父親】 はい!守ります!
【子供】 よろしい!では、私を幼稚園まで送ってください
【女NA】 交通ルールは命のマナー香川県
【 寸評 】
横断歩道、安全速度、シートベルトの3つの交通ルールがありますが、それを言うだけで7~8秒かかってしまう。しかも、ふつうに言うだけでは印象に残らない。そこで作者が出した答えは、子供が親に厳しくルールを教えるという「逆転の構図」。ラストの「では私を幼稚園まで送ってください」もキュート。(相手が幼稚園バスの運転手さんでも面白いかも) 難しい条件にポジティブに挑む姿勢に拍手!

柿茶本舗

「何を飲ませた?」篇田中 貴弘(東京都)作品を聞く
SE(廊下を走ってきて扉を開ける音)(ママ友同士の会話)
【女1】 あなた!うちの子に何飲ませたの!
【女2】 柿茶ですけど‥(キョトンとした感じで)
【女1】 どうりで!
あの子のあんなおだやかな顔見るの、いつ以来かしら!
【男NA】 ノンカフェインで、ほんのり甘い味わい。
SE(柿茶を注ぐ音)
【男NA】 柿茶本舗の柿茶。
SE(柿茶を注ぐ音)
【女1&2】 あ~、落ち着く~……
【 寸評 】
「あなた、うちの子に何を飲ませたの?」。そんなモノモノしいセリフで始まるこのCM。思わず次が聴きたくなる導入です。ただならぬ女性の声につられて聴いているうち、柿茶がほんのり甘くて穏やかな気分になること、ノンカフェインで子供にも飲ませられることを、しっかりコマーシャルされてしまう・・・みごとに一杯飲まされた気分になります。

株式会社 喜多猿八

「会話」篇阿部 史太郎(千葉県)作品を聞く
(極道二人の会話調で、家を食い荒らすギャング達の屋根裏でのシリアスな会話のイメージ。)
【男A】 「えんぱちおうち見守り隊」って知ってるか?
【男B】 あぁ゛?
【男A】 なんでも、経験豊富なプロスタッフが、お客さんの困りごとに全力であたるらしいわ。
【男B】 チッ!そりゃ最悪だな。
【女NA】 以上、シロアリとハチの会話でした。
害虫・鳥害対策なら「えんぱちおうち見守隊。」
喜多猿八。
【 寸評 】
「おうち見守り隊」は、人間にとっては最強の味方。ということは、シロアリやハチにとっては最悪の敵になる・・・。視点を変えると世界が反転するギミックを、上手に使った作品です。HPに掲載された「おうち見守り隊」の優しい笑顔の写真を見ると、いかにも親身になってくれそう。「経験豊富なプロのスタッフ」という汎用的な説明より、彼らにしかない存在感をコピーに落とし込めれば、より面白くなったと思います。

医療法人社団 しん治歯科医院

「桃太郎」篇小林 猛樹(千葉県)作品を聞く
【男NA】 桃太郎は、イヌとサルに聞きました。
【桃太郎】 ほかのお供を呼びたいけど。誰がいいかな?
【イヌ】 シカがいいワン!
【サル】 シカがいいウキーッ!
【桃太郎】 みんな甘いものがすきだからな~。よし、ヨボウ、シカ。
【男NA】 虫歯になる前に、予防-歯科。しん治歯科。
【イヌとサルと桃太郎】 キビ団子、おいしいね~
【 寸評 】
「予防歯科」という言葉を楽しく覚えてもらおうと、桃太郎のお供に「ヨボウ、シカ」。ダジャレで攻めた作品です。CMとしては、「予防歯科を実践しなきゃ」と思わせる仕掛けがあれば良いとも思いましたが、お子さんも安心できる、笑顔あふれるしん治歯科なので、ムズカシイことは抜きで、笑顔になれるCMが正解ですね。

多度津自動車学校

「富豪には不向き」篇糴川 航嗣(大阪府)作品を聞く
【執事】 旦那様、多度津自動車学校はコスパがいいだけでなく、学科はオンデマンドで受講できるし最短14 日で免許がとれるほど、タイムパフォーマンスも優れているようですぞ!
【富豪】 じゃあ、時間も金も持て余してる私には不向きだね。
【執事】 お、おっしゃる通り!
【女NA】 コスパもタイパもいい、多度津自動車学校
【 寸評 】
多度津自動車学校はコスパもタイパも抜群。なのに、それを全否定する人物が現れた。「CMなのに褒めない」という裏切りで、リスナーの耳をひきつけます。執事と富豪のセリフがちょっとステレオタイプなので、2人の性格や関係性を、具体的に細かく設定していくと、セリフを書くのが楽しくなり、より面白いオチも見つかると思います。

中小機構 四国本部

「経営のナイスショット!」篇倉田 雅章(神奈川県)作品を聞く
【女キャディ】 このホール狭いので刻んでいきましょう。
(ナイスオン!)※バックでキャディの声
【男NA】 キャディーさんは、いい時も
(ファー!)※バックでキャディの声
悪い時もそばにいます。
中小機構も同じ。企業に寄り添い成長を本気でサポート。
【女キャディ】 バーディーチャンスですよ~!
【NA】 一緒に目指します、経営の~
SEバシッ!(ショット音)
【キャディさん】 ナイスショット!
【NA】 中小機構四国本部
【 寸評 】
中小企業の経営者がターゲットなので、CMの設定をゴルフにしたのも◎。キャディさんを中小機構の存在のなぞらえたのも◎。「良い時も悪い時も」という汎用的な説明よりも、「ああ、ゴルフのキャディさんがいて助かったー」と実感するシーンに絞ると、生き生きとしたセリフが生まれ、より「刺さる」CMになると思います。

濱川学院

「厳しい言葉」篇鈴木 克己(大阪府)作品を聞く
(女子高校生が塾から帰って来て部屋に入る)ドアの音~
【娘】 あーあ、今日塾の先生に厳しいこと言われちゃった
【母】 やっぱり部活辞めなきゃ受験は厳しいって?
【娘】 ううん。部活も、絶対あきらめちゃダメだって‥
よーし,私、勉強も部活も100 点目指す!
【男NA】 青春を欲張れ!濱川学院
【 寸評 】
悩める高校生にまっすぐに向き合う、濱川学院の姿勢を、ストレートに表現したCM。
「厳しい言葉」は、愛情と自信がなくては言えません。さらに「青春を欲張れ」と言い切るには覚悟が必要です。これを読んだ数人の審査員が「濱川さんの顔が浮かぶ」「濱川さんらしい」と言いました。その時点でCMとして成功ですね。

マリモハウス

「どうなる!?ボクんち」篇斗内 邦裕(北海道)作品を聞く
【男児】 ボクんちができることになったのに、
【ママ】 絶対、洋風のオシャレな家!
【パパ】 い~や!庭付きの和風な家!
【男児】 パパとママが喧嘩して、……どうなる!?ボクんち。
【男NA】 モデルハウスを見比べれば、家族の理想が分かってきます。
【男児】 ちょうどいい暮らしマリモハウス
【家族3人】 こうなる!ボクんち♪
【 寸評 】
家を建てることは、家族にとって一大事。意見が割れるのはあたり前。この子供が叫ぶ「どうなる!?ボクんち」は、家を建てる人に共通する心の叫びなのです。そんな家族を救うのが、マリモハウスのモデルハウス。CMに「あるある~」と共感し、マリモハウスに行くことで、めでたく「こうなる!ボクんち」になることを願っています。

三木鋼業株式会社

「本当にあった怖くない話」篇三宅 佑奈(岐阜県)作品を聞く
【女1】 怖い話のトーン。
ねぇ知ってる?
あそこのリサイクルステーション、
真夜中になると出るんだって……
資源物を持ち込む人が!
【女2】 キャー!ただのいい人―!
【男NA】 24時間365日持ち込みOK!
じゅんかんコンビニ24
【女1】 怖い話のトーンに戻って
商品券ももらえるんだって……
【 寸評 】
三木鋼業には面白い作品が集まりました。2年前の「金属くずみたいな男」が鮮烈でしたが、そのCMを聴いて、面白いコピーが集まったのかも・・・?この作品は「キャー!ただの良い人―!」というセリフで、審査員全員を笑わせてくれました。時代に必要とされるリサイクル業界こそ、こういう「明るい笑い」が必要だと思います。

美馬産業株式会社

「和三盆が生んだ世界初のラム」篇森本 展生(神奈川県)作品を聞く
SE: 大人のバーの雰囲気。ジャズのBGM~グラスに氷が弾ける音
【バーテンダー】 お客様!
ラム酒がサトウキビから作られているのはご存知ですか?
【30代女性】 ん~、私、好きなの。
【バーテンダー】 でも、これは和三盆の糖蜜からつくられているんです。だから‥
【30代女性】 美味しい!(バーテンダーの声に食い気味で)
【バーテンダー】 上品な甘さがしずかにひろがります。
【女性】 初めての味だわ~
【男NA】 和三盆ラム、東かがわの馬宿蒸留所から。
【 寸評 】
お酒のCMで大事なのは、当然ですが、「飲みたい」と思わせること。和三盆ラムは商品自体が魅力的なので、突飛な設定より、お酒の味わいを素直に伝えるのが効果的。この作品は、お酒好きな女性が、初めての味に出会った驚きをシンプルに描いています。バーのざわめき、氷の音とあいまって、「飲んでみたい」と思わせるはず。

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