編集 田尾 和俊
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団長:讃岐うどん界の“表現の魔術師”と呼ばれる私ではありますが。
ごん:誰が言ってるんですか?
団長:ま、「自自ともに認める」ところで。
ごん:自分だけじゃないですか。
団長:そのあたりについては「ピピ両論」あるところではあるが。
ごん:「賛否両論」じゃなくて。
H谷:総合すると、「誰も認めてない」ということですね(笑)。
団長:ま、そうとも言いますが、今回はその私がうどんの表現に感服したという回を一つ。
ことちゃんの「ぞぞー」
団長:琴電のマスコット駅員の「ことちゃん」がうどんをすすっているイラストが出回っているみたいやけど。
ごん:駅の路線図とか、電車の車体にも出てますよ。
団長:そのイラストに、うどんをすする擬音で「ぞぞー」と書いてあったのを見て、いたく感動したんよ。
ごん:「ツルツル」とか「ズルズル」とかは見ますけど、「ぞぞー」は初めて見ましたね。
団長:実は、このうどんをすする音の表現については、私はかねてからちょっと一家言ございまして。
ごん:聞きましょう。
団長:あれは忘れもしない、2000年に入る前だったか2000年代に入ってすぐの頃だったか。
H谷:忘れてるじゃないですか。
団長:ツッコミ、ありがとうございます。その「讃岐うどん巡りブーム」が最初のピークを迎えた頃、『小説現代』いうちょっと分厚い月刊誌に連載されてる「東海林さだおvs椎名誠の太っ腹対談」いう企画に、ゲストで呼ばれたんよ。
ごん:何でそんな巨匠の対談に呼ばれたんですか?
団長:その連載は「東海林さだお先生と椎名誠先生が毎回ゲストを呼んでいろいろ話をする」というスタイルなんやけど、あのお二方だからゲストは毎回、食べ物とか遊び物とかそういう関係の人を呼んでたみたいで、その流れで「讃岐うどん巡りブームを起こした人」ということで俺が呼ばれたらしい。
ごん:よっぽどネタ切れだったんでしょうね(笑)。
団長:ま、そこは強く否定はできんけど(笑)、それで東京の神楽坂の料理屋みたいなところで対談してたら、巨匠と言えど、やっぱり讃岐うどんについては根本的にあまり理解されてないみたいなんだ。
ごん:讃岐うどんは特異な世界ですからね。グルメな方とは言え、なかなかすべてを理解するのは難しいと思いますよ。
団長:あの料理漫画の最高峰付近にいると言われる『美味しんぼ』でさえ、ブームの頃には讃岐うどんを数回取り上げてて『恐るべきさぬきうどん』もマンガの中に出て来たりしてたけど、やっぱりうどんの表記に関してはちょっと違うところがあるんよね。そやから、これはここできちんと正してやらないかんと。
ごん:東海林さだお先生と椎名誠先生に対して、上から目線ですね。
団長:あ、すみません(笑)。けど、讃岐うどんに関しては俺の方が上やからな。ほんでその時、「うどんをすする音」の話になって、俺は一つの視点を指南して差しあげました。
ごん:ほうほう。
団長:一般的に、うどんをすする音を文字で書くと「ツルツル」とか「ズルズル」とかがポピュラーなんやけど、私の個人的な意見として「うどんをすする音を文字にする時、“ル”が付くうどんと、“ル”をつけてはいけないうどんがある」という話をしたわけだ。
ごん:と言いますと?
団長:例えば「ツルツル」と「ツーツー」、「ズルズル」と「ズーズー」は、食べ方の違いではなくて、「麺の違い」が窺える。
ごん:言われてみればそうですね。
団長:讃岐うどんの麺は、麺の太さとか断面の形とか、さらに麺のコシの伸びや柔らかさや固さや、そういうのがいろいろ組み合わさって無数のバリエーションがある。そのバリエーションこそが「讃岐うどんテーマパーク」の魅力なんだから、麺をすする音もそのバリエーションに合わせて違う表現ができるはずで、「ある一つの音だけで讃岐うどんのすする音を表現するのは、ある意味、讃岐うどんの心を外しています」と、恐れながら申し上げたわけだ。
ごん:ほうほう。
団長:その中で、数多い表現のバリエーションの一番わかりやすい分類は、「“ル”が付く音」と「“ル”が付かない音」だと。
ごん:なるほど。で、それを聞いた東海林先生と椎名先生の反応はどうだったんですか?
団長:「やっぱり香川県民のうどんに対する感覚は異常だ」って(笑)。
ごん:あっはっはっは!
H谷:団長が異常なだけなのに、県民全体に広げられてるじゃないですか(笑)。
団長:すみません(笑)。ほんでね、そういう経緯もあって、あの「ことちゃん」の「ぞぞー」に「表現が素晴らしい」と感動したわけです。
ごん:ちなみにあの「ぞぞー」は、ちょっと物議を醸したりしたそうですよ。
団長:何の物議や。
ごん:なんか、音があまりさわやかでないとかどうとか。
団長:そんなさわやかな音を求めるんなら、でっかいお皿の真ん中にちょっとだけパスタが乗っとるイタリアンの店に行きなさい。
H谷:はははは(笑)。
団長:とにかく、「ぞぞー」に物議を醸す人は、まだまだ讃岐うどんに対する考察が浅いと言わざるを得ない。「ずずー」と「ぞぞー」では「ずずー」より「ぞぞー」の方が食べてる麺が細い…ぐらいの推察ができるようにならないと。
H谷:おそらくこのポスターに平仮名で「ぞぞー」って書いた人は、考えて考えて「ぞぞー」に行き着いたんでしょうね。
ごん:いやー、「ことちゃん」の「ぞぞー」がそこまで深いことだったとは知りませんでした。全然違うかもしれませんけど(笑)。
団長:というわけで、このコピーを書いた人を私は高く評価します。ぜひ皆さんも、ここから「ぞぞーという音のする麺は一体どういう麺なんだ?」というふうに話を展開して行ってくれると、もうあなたは引き返せない沼の中(笑)。
ごん:あっはっは!
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