編集 田尾 和俊
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団長:俺はうどんでメシ食っとるわけでないからな。いや、うどんは食いよるけど、うどんで生活しとるわけではないからな。
ごん:どしたんですか急に。
団長:いや、たまには「ちゃんと仕事しよる」いうのを言うとかんと、誤解しとる人が結構おるらしくて。実はこないだ、某うどん屋の若手大将から「田尾さんはあちこちのうどん屋さんからいっぱいお金をもらってウハウハなんですか?」って言われたんや。
ごん:あっはっは!
団長:「俺にお金払いよるうどん屋、周りに1軒でもあるか? それ以前にお前、俺にお金払たことあるか?」って言うたんやけど(笑)。
H谷:絶対払ってないですよね(笑)。
団長:しかし、どこからそんな噂が出るんやろなあ。ブーム勃発以来30年近くの間に俺がうどん屋からもらったのは、2003年に「かがわ21世紀大賞」をもろて新聞に載った時、「がもう」に行ったら大将が「なんやもろたらしいなあ」いうて天ぷら1個くれただけやぞ。
H谷:ははははは(笑)。
団長:しかも、『恐るべきさぬきうどん』は会社の社長しよる時に出したから印税もなくて売上は全部会社に入ったし、映画『UDON』の協力は全部ボランティアやし。ブームの真っ最中にガモムスに俺の収入を言うたら、ガモムスに「こんなブーム作ったのに、切ない…」言われたんぞ。
ごん:けど正直に収入を言うたかどうかわかりませんからね。
団長:すいません、ちょっと少なめに言いました。
ごん:あっはっはっは!
団長:というわけで、今回は私の本業のスピンオフの一部を紹介した回です。
団長の色水遊び
団長:こないだ、丸亀の「ゆめタウン」の2階で、ある親子教室があったんやけど、それの1回分の担当を頼まれたんだ。
ごん:親子教室?
団長:四国学院大学と、中讃ケーブルテレビと、「ディスカバリーチャンネル」が共同で企画した親子教室なんやけど。
ごん:中讃ケーブルテレビと四国学院はいいですけど、何ですか、その「ディスカバリーチャンネル」は。一つだけ世界クラスの超ビッグな話になってますけど。
団長:「ディスカバリー」の出先みたいなのが香川にもあるらしいんやけども、そこがPR活動の一環でいろんなことをやってるらしいんだ。それでね、「ディスカバリーチャンネル」に「工場見学」みたいな子ども向けの番組があって、小学生の親子を集めてその番組を10分ぐらい見せて、その後50分ぐらい、四国学院の先生が出て行って番組の内容に関連した授業みたいなことをやるというイベントが継続的に行われているらしい。
ごん:なるほど。
団長:ほんでそのうちの1回に「印刷工場を見学しよう」いうのが出てきたらしいんだ。そしたら関係者の間で「これは田尾さんにやってもろたらええんちゃうか?」いう話になって、俺に依頼が来たらしい。
ごん:まあ出版業界にいましたからね。
団長:けどな、事前にその番組を見せてもろたら、「印刷工場で雑誌ができるまで」みたいな内容で、デザインも何もかもできた状態のデータを印刷会社で製版するところから始まって、そこから印刷工程に入って黒、赤、青、黄の色が乗っていって…
ごん:そこは見栄えがしますよね。だんだん色が乗っていってページができていきますから。
団長:ほんで刷り上がった紙を断裁して、製本して、本の形になって出来上がり、終わり、なんだ。ちょっと待てと。それ、印刷屋さんが解説した方が早いやないか。
ごん:あっはっは!
団長:俺は「印刷」でなくて、印刷に入る前段階の「編集」のプロなんだ。
ごん:そうですよね。団長に頼むんなら、印刷屋さんに発注する前の、徹夜でドロドロになって編集部員たちが屍累々になっている締切ぐらいの所からやって欲しかったですね(笑)。
団長:失礼な。わが社は「社員全員が健康で豊かな環境で仕事ができるような職場」がモットーやったやないか。福利厚生も充実して。
ごん:福利厚生なんてありました?
団長:ま、夜中にみんなで編集室の真ん中のストーブでスルメ焼いて食べたり…
ごん:どんな福利厚生や!
H谷:ちょっと楽しそうですけどね(笑)。
団長:けど四国学院に印刷屋さん出身の先生なんかおらんし、日にちも迫っとるから俺がやらなしょうがないということになって。
ごん:「締切は徹夜でドロドロです」とか、「イス3つ並べた上にみんなダランと寝てます」とか、親子教室でどない説明できるっちゅうねん! 小学生の夢壊すっちゅうねん。
団長:そんな話なんかするかい。ちゃんと考えたがな。まず、小学生の親子教室いうても「ディスカバリーチャンネル」やから、おそらく小学校高学年の意識の高い子どもたち、もしかしたら「今、漢字の書き取りをしたら俺も負けるんではないか」というようなスーパー小学生たちが集まってくるかもしれん。それなら俺の持ちネタでもそれなりに行けるかもしれんと思って。
ごん:例えば?
団長:印刷工程にも絡めて、みんなにA4ぐらいの紙を渡して、そこに8分割の線を引いて、裏と表に順番も向きもバラバラに数字を書かせて、それを2つに折って、4つに折って、8つに折って、3辺をはさみでジョキン、ジョキン、ジョキンと切って開いたら、あーら不思議、1ページから16ページまでの本ができちゃった、みたいな。
ごん:いいですね。手遊びみたいなのをさせたら小学生は楽しいでしょうね。
団長:そこから、印刷する時の基本的な紙の大きさとか、紙質の種類とか、縦書きと横書きと右開き、左開きの関係とか。「縦書きは右の上から始まって左の下で終わるだろ? ほんで、終わったところをめくる。だから右に開くんだ。横書きは左の上から始まって右の下で終わるから、そこを持つと左に開くことになるんじゃ」とか。
ごん:勉強になるじゃないですか。
団長:あるいは「中とじ」と「平とじ」の理由とか。「中とじは2つ折りにして真ん中をホッチキスで留めて本にする。けど、ページ数が多くなって分厚くなった紙を2つ折りにしたら、断面の真ん中が飛び出てくるだろ? けど、本屋で真ん中が飛び出た本、見たことあるか? ないだろ? そこは最後に飛び出た部分をドンと切るんだ。けど、切ったら端っこの方に印刷された文字や写真がちょん切られて飛ぶかもしれんだろ? だからページ数が増えたら中とじができんようになるから、1枚1枚バラバラの紙を積み重ねて背中をノリでくっつけたり、8ページとか16ページの紙を2つ折りにしたやつを重ねて背中をノリでくっつけたりして平とじにするんだ」とか。
ごん:それ、小学校の高学年でも結構難しい話になりますよ。
団長:ま、こっちも大人の威厳を示しとかんとね。
ごん:大した威厳ではないですけどね(笑)。
団長:ほんでまあそんなところで「手遊びと知識を織り交ぜたら50分ぐらいいくやろ」と思いながら、前日に念のために、担当者に「ちなみに当日の小学生って、どれくらいの学年の子ですか?」いうて聞いたんや。そしたら「大体、小学校の1年生から3年生ぐらいまでですかね」って。低学年やないか! こないだまで幼稚園だった子が来るんやないか!
ごん:あっはっは! 用意したプログラム、ほぼ全滅!(笑) で、どうしたんですか?
団長:急遽、「色水遊び」に変更しました。
ごん:何ですか。
団長:絵の具で赤と青と黄色と黒と白の色水を作って、別々に1リットルのペットボトルに入れて持っていった。あと、それとは別にちっちゃいペットボトルにピンクとか緑とか橙色とか紫とかの色水を作っといて。
ごん:お! それおもしろそうじゃないですか。
団長:ほんで、当日集まった小学生の中から何人か前へ呼んでテーブルに着かせて、全員の前に透明のプラスチックのコップを5つずつ置いてね。そこに赤と青と黄色と白と黒の色水を入れて、別の空のコップを1つ置いて、スタンバイや。
ごん:はいはい。
団長:そこで「第1問! この色の水を作ろう!」言うて、俺がピンクの色水を見せる。「みんな、どの色とどの色を混ぜたらこの緑になるか考えて、混ぜてピンクの水を作ろー!」言うてね。
ごん:なるほど、赤と白の水を混ぜたらできるというわけですね。いいじゃないですか。
団長:ところが、ワタクシ、小学生低学年の知識を過大評価していました。ピンクを作るのに、いきなり黄色の水を入れる子が出現!(笑) さらに、赤の上に黄色を入れるお子たちも続出!(笑)
ごん:たぶんみんな、全く想像がつかないんですね。
団長:「第2問はこれ! 緑色の水を作ろう!」言うたら、もう超難問や。赤と青と黄色と白と黒の色水をなんぼ見ても、緑につながる取っかかりがどこにもない(笑)。いきなり黒の水を入れる子もおるし、あれやこれや入れてどんどんどす黒くなっていく子も続出や。それを俺が持ち上げて「あれー? 泥水ができたぞー」「イカスミができたぞー」って。
ごん:あっはっは!
団長:そこで教訓や。「みんな見てみー。いろんな色を混ぜれば混ぜるほど、汚くなっていくのがわかるだろー?」
ごん:何の教訓やねん。
団長:「人間、長い人生の途中でいろんなものを吸収しながら汚くなっていく」という、人生の教訓やないか。
ごん:あ、なるほど!…って、小学生に何を教えるんですか(笑)。
団長:みたいなことで50分使って、最後はみんなワーワー言いながら帰ってくれました。
ごん:いやー、さすがですねえ。
団長:あと、心配なのは親御さんの反応だけや。
ごん:子供と親では受け取り方が違ったりしますからね。
団長:いや、子どもはおもしろくなかったとしても「「意外と田尾さんおもろないで」みたいな話を広げへんやんか。
ごん:そっちかい!
団長:けどお母さんたちはそうはいかんがな。
ごん:いろんなところのママブログなんかに書かれますからね。「田尾さんって、思ったよりおもしろくなかった」ってママに書かれるのがごっつイヤなんや(笑)。それは確かにイヤだ(笑)。
団長:皆さん、何でもかんでもネットに上げるのはやめましょう(笑)。
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