麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:10年ぐらい前の『秘密のケンミンSHOW』で「香川では『焼きうどん』を『うどん焼き』と言う」というネタが出たらしいんやけど、今回はその時に来たお便りを紹介した回。

ごん:「焼きうどん」と「うどん焼き」って、ちょっと前に『インタレスト』で調べてましたよね。

団長:やりましたが、その調査結果は次回に回して、まずは放送回のバカ話を。

「ふみや」の「うどん焼き」

団長:お便りを頂いております。

麺通団のみなさん、いつも楽しく聴いております。昨年、某テレビ番組で「讃岐では『焼きうどん』のことを『うどん焼き』と言う」という県民性を指摘していましたが、ご存じでしょうか。

団長:どうなんだ。

H谷:「うどん焼き」ですね。

団長:「焼きうどん」よりは「うどん焼き」の方が、メニュー表記には多いような気がするな。

ごん:どっちもあるような気もしますけどね。

さて、実は小生は「丸亀うどん焼き研究会」を立ち上げ、郷土のB級グルメとして発掘しようと活動しております。5月14日から15日に国営讃岐まんのう公園で開催される「四国B級ご当地グルメフェスタinまんのう公園」にも出店します。

団長:「小生は」と言った時点で若い女の子でないことは明らかですが(笑)。

ごん:いやいやわからんですよ。「昔言葉使いマニア」みたいな女の子かもしれませんよ(笑)。

団長:そうか。「あちきは釜玉派でありんす」とか言うからな。

H谷:聞いたことないですよ。

麺通団のみなさんも高松の「ふみや」等で「うどん焼き」は食べられたことがあると思います。

団長:「ふみや」のうどん焼きに来たか。しょうがないな、こないだ。

ごん:はいこないだ。

団長:夫婦で「ふみや」に行ってきたんだ。

ごん:よくご夫婦で「ふみや」に行ってらっしゃいますよね(笑)。

団長:夜に、散歩がてら。

ごん:その年のご夫婦が散歩がてら、お好み焼き屋の「ふみや」に行くっちゅうのもどうかと思われるんですけど(笑)。

団長:違う違う。この歳になって初めて、健康を気にして散歩し出すんじゃ。

ごん:でも、その健康のための散歩の間に、「ふみや」でたらふく食って帰るんでしょ?

H谷:はははは。

団長:食事は健康の元や。

ごん:田尾家の場合、健康を損ねるほど食べてそうな気もするんですが(笑)。

団長:確かに。でね、「ふみや」に着いたらもう閉店直前で、暖簾は中に入ってしもとんやけど中は電気がついててまだお客さんがおる気配があったから、うちの家内がちょっとだけドアを開けて「まだ行けるん」って聞いたんよ。そしたら女将さんが「ええよ」って言うから入って…

ごん:やっぱそこはね、団長ご夫妻が来たら「終わりました」とか言うわけにはいかんからね。閉店後でも、さっき冷蔵庫にしまったキャベツをもう一回取り出してね。

H谷:ええええ。

ごん:何なら先に注文したお客さんのお好み焼きを「どうぞ」いうて団長夫妻に出してね。

団長:何でやねん! 俺ら、めちゃめちゃ低姿勢でそーっと「まだ行けるん?」って言うたんぞ。「いいんですよ、ダメだったら我々は他の店に行きますから」みたいな気持ちに満ちあふれた態度やがな。

ごん:けどそんなに気を遣うんなら、暖簾が入ってるのを見たらそーっと開けて「まだ行けるん?」なんて聞かずに、そのまま他の店に行くよな普通。

H谷:そうしますね。

ごん:ということは、ドアを開けて「まだ行けるん?」って聞いた時点で、「行けますよ」という返事ありきの行動だと言わざるを得んよな。

H谷:全くその通りです。

ごん:「どうしても断るなら、手土産の一つも出さんかい」みたいな勢いで行ったとしか思えんよな。

H谷:全くです。

団長:なるほど、「かさにかかって責め立てられる」いうのはこういう感じか。

ごん:あっはっは!

団長:言うとくけど、「ふみや」と我が家は家族ぐるみのお友達やぞ。昔は子供連れて行ったらアイスくれよったし、今も大将が高野山に行ったら名物の「ごま豆腐」買うて来てくれるし、大将が愛媛に行ったら「みかんパン」買うて来てくれるし、大将が徳島の親戚んとこに行ったら柿とかくれるんぞ。

ごん:もらってばっかりじゃないですか!

団長:俺も丹波篠山で焼き栗買うて帰ったら持っていくがな。というか、そういう話じゃなくて、とりあえず店に入って注文することになったんやけど、「ふみや」で夫婦でお好み焼き2枚いうのは、歳とってくるとだんだんしんどくなってくるわけよ。

ごん:わかりますよ。「ふみや」ですからね(笑)。

団長:そこで、この日は「お好み焼き1枚とそば焼き1つ」を夫婦でシェアしようと思ったわけだ。

ごん:「お好み焼き2枚」よりはちょっと軽い感じですね。

団長:それで「肉玉と、そば焼きにしようかなあ…」とか言いよったら、「ごめんなー、おそば、今日もうないんよ」って。ほんだら大将が横から「うどん焼きはできるで」って言うてきた。

ごん:お!

団長:「そこまで言うなら行ってみるか」というわけで、俺、生まれて初めて「ふみや」で「うどん焼き」を頼んだんや。ほんで大将がジャーッ! いうて「うどん焼き」を作って俺らの前の鉄板に持ってきたから、とりあえずフォークで2本ぐらい取って食べた瞬間、大将が「田尾さん、どこのうどんかわかる?」って聞いてきた。

ごん:おおっ!

H谷:団長に挑戦状ですか!

ごん:これ、間違うたら団長の権威がダダ崩れやで!

H谷:僕らのボスですからね。これ外されたら困りますよね!

団長:いやいやいや! うどん焼きやぞ! しかも、朝、どこかから仕入れてきて、おそらく茹で上がりから12時間ぐらい経ったうどん玉が、ソースまみれで炒められて出てくるんぞ。それを一口食って、「どこのうどん?」言われてもあーた。

ごん:でも、どこかの名のある製麺屋から仕入れとるわけですよね。俺らにはわからんけど、だから僕らは団長にはなれんわけで。

H谷:そうですよ。僕ら、“神の舌”持ってないですから。

団長:俺、めちゃめちゃ吟味したがな。ほんだらな、麺は太さが割と均一な中太なんやけど、明らかに冷凍うどんではない。

ごん:ほうほう。

団長:これはおそらく、どこかの製麺所の朝のゆでうどんがヘタった状態であることは間違いない。けど、晩になったらもっとプツプツ切れるはずなんやけど、ちょっと伸びがあるんだ。そこで、必死で頭の中で「店」を探したね。

ごん:仕入れ先ですから、きっと近くの製麺屋ですよね。

団長:そう。

ごん:しかも「ふみや」はかなり昔からやりよるから、製麺屋もおそらく昔からある製麺屋ですよね。

団長:そうに違いない。すると、田町の「丸川」、中野町の「松下」、宮脇町の「丸山」の3つが最有力になる。

ごん:いきなり3択に絞られました。

団長:しかし、「丸川」の麺とは明らかに形状が違うんだ。「丸川」はもうちょっとエッジが立ってる。それから「松下」はもうちょっと細い。というわけで、俺の頭の中で「丸山」が残ったんだ。「丸山」は昔はそうでもなかったんやけど、打つ人が変わったんか、ここ数年は朝食べに行ったら麺が固太になっとんだ。そこで、「あれが時間が経ったらこうなるんちゃうか? なるか? なるかもしれない」…と思いながら、意を決して「丸山?」って言うた。

ごん:すると?

団長:大将が「うわ、当たりや! やっぱりすごいんやな!」って。周りに残ってた数人のお客さんが「おお!」言うたわ。どうよ。

ごん:味というより、ほとんど「状況証拠」から導き出した答えですけどね(笑)。

H谷:ははははは(笑)。ちょっとね。でも、やっぱさすがですよ。

団長:だろ? 「伝説」いうのはこうやって作られていくんや(笑)。これで俺はもう「ふみや」では伝説になったから、もう二度とチャレンジしない(笑)。

ごん:あっはっは!

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