麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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ごん:しかし皆さん方、うどん屋でネタをよく拾ってきますよね。谷本ねえさんを除いて。

谷本:ごんさんもじゃないですか!

団長:ま、俺とH谷川君はたぶん、うどん屋に行った時の目の付け所が違うんやろな。

ごん:目の付き処がね。

団長:誰が牛やねん。

谷本:けど、団長とH谷川さんがうどん屋に行ったら、私らより何かが起こる確率が絶対高いですよね。

ごん:ネタを拾うというより、ネタを作りに行ってるんじゃないですか?

H谷:さすがにそんなことはないですよね。

団長:作りに行ったことはある(笑)。

台風の日の「はりや」

団長:昨日。

ごん:はい昨日。

団長:台風が来よったやんか。

ごん:来ましたね。「高知に向かってみました。いや、やっぱりやめとこ」みたいな変なコースの台風が。

団長:「ピンポンダッシュか!」みたいなコースでどっか行ったやつ。あれが昨日の朝、高知沖の下から真っ直ぐ高知に上陸すると見せかけとったやんか。

ごん:完全に高知に上陸して四国を抜ける勢いでした。

団長:ほんでね、四国学院大学があいつのフェイントにに引っかかって、朝7時の段階でいち早く休校になったんよ。

ごん:香川に警報が出ましたからね。

団長:それで、昨日は善通寺の大学に行かずに、朝から高松の家で仕事をしよったんやけど、昼前に腹が減ってきたんだ。

ごん:まあ、腹も減りますわな。

団長:平日の火曜日の昼に、腹が減ってきたんだ。

ごん:何回も言わなくても、さっき聞きましたよ。

団長:ここ大事なとこやから。俺は基本的に平日は善通寺で授業しよるから、昼飯の時間は善通寺におるわけよ。だから大学に行き始めてから、平日の昼に高松でうどんを食べる回数が激減してるわけだ。

ごん:なるほど、「平日の昼に高松でうどんが食える」という滅多にない日がやって来たわけですか。

団長:そうです。しかも、外は暴風雨。

ごん:いやいや、そこは「しかも」はおかしい。

団長:暴風だったら絶対客が少ないやんか。

ごん:確かにそうですけど。

団長:「こういう時にこそ、普段行列で入れない店に行くべきだ」ということで、ワタクシ、「はりや」に行くことにしました。

ごん:お。

団長:あの、いつも大行列の「はりや」も、さすがにこの状況で外に並ぶのはみんな避けるだろうと。

ごん:並ぶのを避ける前に、行くのを避けると思いますけどね(笑)。

団長:そこで外を見たら、ゴウゴウいうて風が吹きよる上に、横殴りの雨や。こんなもん、傘さして行ってもどうにもならん。「はりや」は車を停めて店まですぐやけど、バタンと開けてバタンと締めてターッと走ってもずぶ濡れになる勢いやから、考えたんだ。カッパを着ていこうと。

ごん:カッパを着て自転車で行こうとかじゃなくて?

団長:カッパを着て車に乗っていく。

ごん:あっはっは!

団長:ほんでうちの家内に「カッパ着てはりや行こう」言うたら一笑されて、「一人で行って来たら?」って言われた。

H谷:まあ普通そうでしょうね。

団長:けど俺はもうこんな滅多にないチャンスを逃すわけにいかんから、「ほな一人でカッパ着て行く」言うて。しかも、カッパ着て行ったら絶対ウケるやん。

H谷:ははははは(笑)。

ごん:行動の基本理念は、まずそれですよね。ウケるかどうか。

団長:大事なことやからね。ほんでカッパを探したんやけど、家にないんよ。そしたら家内に「サウナスーツ着ていったら?」って言われて。あの、汗かくために着る、通気性の悪いゴムっぽい生地のダボッとしたやつ。

ごん:あー、確かに防水っぽいですね。

団長:「しょうがない、これしかないんかー」思いながら黒のサウナスーツの下をはいて、上からまた真っ黒なやつを着てジッパー閉めたら、もう家出る前に汗かいてくるんや。

ごん:だって、そういう用途のウエアですから(笑)。

団長:ほんで家内に「もう汗かいてきたわ」言うたら、「それでカレーうどん食べてきたら?」って。

ごん:あっはっは!

団長:「汗が倍増して痩せるわ」言うたわ。そんなもん、「カレーうどんの大食って痩せた」言うたらダイエット界に激震が走るわ。けどカッパがないからしょうがないということで、上だけ脱いで車を運転して「はりや」に着いたら上を着てフード被って店に突撃したらええということになったんだ。

ごん:まあそれで何とかなりますね。

団長:玄関を出てエレベーターで下に下りて家の駐車場までのわずか数メートルの間、通路に屋根が付いとんのにパシパシ言うて雨が当たってきたけど、こっちは全身「はりやの口」になっとるから引き返すわけにはいかん。そのまま車に乗り込んで、車の中でサウナスーツの上だけ脱いで出かけました。家を出る前に家内から「行ったら状況を電話してくれ」って言われて。

ごん:奥さんも行く気はないけど興味はあったんですね(笑)。

団長:そうらしい。で、車に乗って郷東川渡ってゲオの交差点を右に曲がって高架をくぐって次の交差点で赤信号で止まったら、あそこから正面のずーっと先に「はりや」の駐車場の大きな看板と駐車スペースが見えるやんか。

ごん:見えますね。

団長:あそこに車が1台も見えんのだ。「ほら見てみい、こんな日にはさすがに誰も来んだろう。絶対に並ばんと食えるぞ」と思って。

ごん:何となくオチが見えてきましたけど、はいはい(笑)。

団長:ほんで信号が青になったから、そこから真っ直ぐ駐車場までの1分足らずの間に考えたんや。これは、店に入って第一声に何を言うかが非常に重要であると。

ごん:ええええ(笑)。

団長:おそらく行ったら大将に「こんな台風の日に客が来たわ」みたいな顔をされる。しかも、全身真っ黒のダボダボで、黒い帽子まで被って首にタオルまで巻いとるけんの。

ごん:まあ大将にしてみたら「田尾さんどしたんな!」となりますわな。

団長:そこでサウナスーツの上を脱ぎながら俺が一言、「暑いわー。カレーうどん」って言おうと。

ごん:あっはっは! ほんでそこにいた客が全員、新喜劇ばりにズコーッと転けて(笑)。

団長:その一言がとりあえず頭に浮かんだから、もううれしくてうれしくて、早く言いたくて(笑)。ほんで駐車場まで行ったんだ。すると、おや? 何か様子がおかしいぞ? 左斜め前の店の方を見ると、あれ? 暖簾が出てないぞ。

ごん:あっはっは!

団長:それでも「強風やから暖簾を中に入れとんかな?」と思って車で近づいて行ったら、「本日は終了しました」って貼り紙があった。

ごん:そらそうでしょうね。

団長:ワタクシ、車の中でサウナスーツの下を履いてジワッと汗をかいたまま、家内に電話しました。「メチャメチャ腹減ったけん、そうめん作っといて」って。

ごん:まあ一言申しあげるなら、「アホですか」。

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