麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:えー、前号までのあらすじです。8月の上旬に某日本出版社のU山さんから「『超麺通団』の1と2を文庫本にして出すから、8月31日までにそれぞれ3000字以上で文庫版の前書きを書いてくれ」と頼まれた団長は、「お盆過ぎて取りかかっても楽勝です」と返事をしてしまいました。

ごん:もうすでに“ネタ振り”の匂いがプンプンしますが(笑)、では今回はオチまで(笑)。

『超麺通団』文庫化顛末記(後編)

団長:ほんで「3000字の原稿を2本なんか、2週間もあったら何とかなる」言うて返したら、U山さんが「もう一つ依頼があるんです」って言うてきたんよ。

ごん:ほうほう。

団長:実は『超麺通団1』の方にはうどん屋の情報が40軒ぐらい入ってるんやけど、あれを出してからもう10年近く経って閉めた店も10軒近くあるし、他の店もデータが変わってるかもしれんということで、「掲載店の営業時間とか定休日とかを最新データに更新したい」と。

ごん:まあそうですわな。

団長:「しかし、田尾さんは原稿を書かないといけないから、データのメンテナンス部分はH谷川さんに頼んでくれませんか?」という話になったんだ。

ごん:それはU山さん、好判断ですね。適材適所で。

団長:H谷川君と言えば歩くデータベース、県下800軒のうどん屋の営業時間から定休日から住所、電話番号からおっちゃんの趣味まで全部覚えとるからな。

ごん:もちろんです。

団長:俺なんか、うどん食べに行く時に「今日は開いてますか?」言うて、店でなくてH谷川君に電話するけんの。

H谷:やめてください。

団長:というわけで、U山さんから、

①8月31日までに、私が3000字以上の文庫版前書きを2本書く。
②8月31日までに、H谷川君が40軒ぐらいのうどん屋の基本データをメンテナンスする。

という2つの依頼をワタクシ、受けたわけです。締切までにまだ3週間ぐらいあるから、私はそれぐらいの原稿料ならお茶の子さいさい。H谷川君も3週間もあれば十分だろうと。

ごん:はいはい。ここまでがネタ振りですね(笑)。

団長:で、そうこうしているうちに、とりあえずお盆が過ぎました。

ごん:はいはい。

団長:で、諸々の仕事も一段落したのでそろそろ原稿に取りかかるかと。まず、『超麺通団1』は讃岐うどん巡りのコースの案内とか店の情報が結構入ってるから、これの前書きと言えば「最近のうどん事情」になるけど、そんな話なら書くことなんぼでもあるがな。

ごん:あーもう、いくらでもありますよ。

団長:だろ? おもろい話、いっぱいあるやんか。しかもこれがお怒りモードになったらあーた、ペンが追いつかんぐらい出てくるがな。

ごん:うどんのことじゃなくて、政治のことまで出てきちゃいます(笑)。

H谷:はははは!

団長:まあいずれにしろ、「1」の方の前書きは楽勝だと。問題は「2」の『団長の事件簿』の方の前書きで、あの内容に関連させるなら、この10年ぐらいの間に起こった新しい「団長の事件」を一本ネタにせないかん。けどまあその辺のネタもラジオや日記で結構披露してきたから、素材はたぶんある。ただ、それをどういう切り口で攻めるかがちょっと考えどころではあるけど、まあ1日峰山でも歩きに行ったら何か出てくるだろうということで、お盆が過ぎ、8月20日が過ぎ…で、気がついたら締切の1週間前になっとったんだ。

ごん:だんだんお約束の展開になってきましたよ(笑)。

団長:これはそろそろ手をつけないかんぞと。

ごん:よくある「夏休みの宿題」みたいなもんですな。

団長:ほんで24日になって、朝から心を入れ替えて原稿の構想を練りよったら、そのうち2本とも何となく「このテーマで行けるぞ」となって、よっしゃよっしゃと。

ごん:見えてきたわけですね。全体の構想が見えてきたら、もう後はあっという間に。

団長:構想が決まったら、もうできたも同然や。ほんでウキウキしながら原稿執筆に取りかかろうとして、ハッと気がついたんや。

ごん:はい?

団長:「H谷川君に依頼してないぞ」って。

ごん:あっはっはっはっは!

H谷:もしもしー!8月の上旬に決まってた話が、何で締切の1週間前に来るんですか! おかしいでしょ!

ごん:明らかにおかしいというか、「おかしいか、おかしくないか」というと、「さもありなん」と言うしかない(笑)。

H谷:何でですか!

ごん:団長がそういうことになるというのはよくあることで、おかしくはない。「あってはならない」とかいう話じゃなくて(笑)、「本人はええんやけど俺たちがすごく迷惑を被っている」というのはいつものことやし(笑)。

H谷:まあまあそうですけど、今回は40軒ぐらいの最新情報のメンテナンスですよ。僕、平日はちゃんと仕事してますから基本的に週末しか動けないんですけど、締切まで週末1回ですよ!

ごん:あっはっは!

H谷:それでね、これはもう申し訳ないですけど「電話で確認するしかない」と。

団長:それでか。こないだ「一福」に行ったら、「何日か前にH谷川さんからものすごく慌てたような電話がかかってきましたよ」って言われたぞ。「“何を慌てとんや。もっと落ち着かなあかんぞ”って言うといてくれ」って返したんやけど。

ごん:ひどい返しですね(笑)。

H谷:それで「一福」の大将にですね、事情を説明して、「『やお』に聞いとって」って。

ごん:あっはっは!

H谷:そういう「うどん屋にも別のうどん屋の情報メンテナンスを頼む」という手段を使って、極力早くやるように努力して。

ごん:H谷川君だからできる手段やけど、ひどい話やなあ。

団長:いや、俺もさすがに少しは罪の意識あったんぞ。

ごん:少ししかない?

H谷:おかしいですねえ。

団長:まあ考えようによっては、これは若い者を育てるための試練だとも言える。

ごん:みんな試練与えられすぎです。

団長:ほんだらの、締切の2日ぐらい前にH谷川君から電話がかかってきたんだ。

H谷:29日ですね。

団長:締切が31日で29日に電話がかかってきたら、「何かアクシデントがあったんか!」と思って心配するやんか。

ごん:「もうちょっとかかります」とか「間に合いそうにありません」とかね。

団長:あるいは取材中に何かトラブルがあったとか。俺は今まで編集長とか社長をやってきたから、何か電話があったらいつも最悪のことをまず最初に考えるんよ。ほんで最悪、「しょうがない、俺がカバーする」という覚悟を常に持って、今までやってきたんや。

ごん:29日ならまだ、必死になったらカバーできるかもしれんということですね。

団長:まだ「俺が頑張ったら何とかなる」という。

ごん:もしくは、言い訳とかいろいろ考える時間もありますしね。

H谷:はははは(笑)。

ごん:U山さんに「天変地異が起こった」とかいろんなストーリーを練る時間もありますしね。

団長:ほんでH谷川君から電話がかかってきた瞬間に秒速2万回転で頭を巡らせて、「最悪、やるのは俺か」と覚悟して電話に出たんだ。

ごん:すると?

団長:そしたら「できたんですけど、FAXどこに送ったらいいですか?」って。「何なら持っていきましょうか?」って。

H谷:いやもう、お急ぎの依頼なんで、できたらすぐにお届けしないといけないと思って。

団長:まだ29日やぞ!

ごん:やっぱりH谷川君や。

H谷:僕はもう、日曜日も引きこもってですね、電話電話で情報を集めて。

ごん:H谷川君に託して大正解!

H谷:それと同時にですね、「団長、原稿できてるんかな?」というのは僕の中にあったんですけど。

ごん:あっはっは!

H谷:「僕、29日に上げましたけど、団長は?」っていう。

団長:H谷川君、言葉の端々に何かトゲがあるぞ。

ごん:で、団長の原稿は?

団長:とりあえず、H谷川君にもらったメンテナンスの原稿は8月31日の夜11時過ぎに、U山さんとこの事務所にFAXしました。

ごん:え?29日に届いたのに2日寝かせて?

団長:ま、締切日には、何か「進んでますよ」というメッセージを送っとかないかんと思ってね。

ごん:で? 

団長:みんな、夏休みの宿題は新学期に入って出したらいかんぞ。

ごん・H谷:おっさんおっさん!

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