麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:情報発信のコンテンツ探しの基本的手法に「網羅」いうのがあってね。素材の要素を網羅的に並べてみると、「アイデアの入口」がたくさん出てくると。

ごん:例えば?

団長:うどんで行くと、「麺、ダシ、ネギ、ショウガ、大根おろし、天かす、七味、醤油、天ぷら、おにぎり、イナリ、丼、小皿、箸…」と網羅的に書き出して、その一つ一つにスポットを当ててみたら、例えば「讃岐うどん全店の『丼』大集合」みたいな情報発信のアイデアがいっぱい出てくるという手法や。

ごん:なるほど。麺やダシを語る情報発信はそこら中でやってますけど、そう並べるとやってない素材が見えてきますね。

団長:で、ネギをいじると、例えばこんなバカ話も出てくる。

ネギに愛を

団長:お便りを頂いております。

ごん:ありがとうございます。

初めまして。県外出身者です。香川にやってきて2年になるのですが、セルフのうどん屋でマナーの悪い讃岐人が目立つことに心を痛めております。いくつかある中で、薬味の取り方のマナーが特に悪いと思います。刻みネギや天かすを大きな器に入れて置いてある店で、薬味が混じっていることです。おろし生姜の皿の中にネギや天かすが入っているとかいうのが各所で見受けられます。

ごん:確かに、ショウガの中にネギが入ってたら、ビジュアル的にちょっとね。けどまあ、どうしても落ちてしまうことはあるんですよね。

H谷:わざとじゃないんですけどね。

奥にある皿からネギを取るのに、そのネギが手前の皿の中に落ちることに違和感を持たないというのはいかがなものでしょうか。

ごん:まあ違和感持ってもなかなかねえ、ダシのかかったうどんの丼を奥の皿にの方に持って行けないというのもありますからねえ。

団長:手前の天かすとかショウガの大皿にうどんのダシをこぼしたら、ネギが落ちたどころの騒ぎでないからな(笑)。

遠い皿から取るのなら、下に手を添えるなどして、次の人が気持ちよく薬味をとることができるようにするものではないでしょうか。下に添えた手がスプーンに触れるのも問題ですが。あの大皿の薬味は店の人がお客さんにおいしく食べてもらうために大皿で提供されているもので、利用者の善意があるからこそ成り立つ素晴らしい制度だと思います。団長にマナーの呼びかけをお願いします。

団長:というご指摘ですが。

ごん:何か嫌なことがあったんでしょうか(笑)。

団長:たぶんすごく潔癖な方で、とても気になるんじゃないかと思いますが、ネギは落ちるねえ。

ごん:スプーンもたいてい小さいから、一人が何回も往復してネギをすくってるとどうしてもね。しかも、後ろにお客さんが並んでたらあんまりゆっくりできんから、つい焦ったりしてポロッと何粒か落とす人が必ず出てくるんですよね。

団長:ネギの大皿と天かすやショウガの大皿が2mぐらい離れとったら混ざらんとは思うけど。

ごん:それはそれで別のクレームが出てくるかもしれませんけどね(笑)。

H谷:店の人がネギのいるいらないを聞いて乗せてくれるセルフも結構ありますけどね。

団長:というわけで、とりあえず「気をつけましょう」としか言いようがないけど、ネギについてはワタクシ、前々から一家言ありまして、「みんな、ネギに対する態度が冷たすぎないか?」という意見なんやけど。

ごん:どゆこと?

団長:まずね、みんなうどんにネギを入れても、たいてい10入れたら1か2ぐらい捨てるやん。中には5ぐらい捨てるやつもおるんちゃうか? 

ごん:まあ、ダシを全部飲む人以外は、何かしら捨てることになるでしょうね。

団長:けど、例えばコーンラーメンのコーンはあれ、最後までスープをかき混ぜて必死で残った粒を探すだろ? 

ごん:みんなとは言いませんけど、結構探しますね。

団長:なのに「ネギは躊躇なく捨てる」いうのはどういうこっちゃ。ええか?ネギはおそらく、細長いネギの状態でまな板の上でおばちゃんにザクザク切られよる時に、「いよいよ俺の人生で最大の能力を発揮する時が来た」と思ってるわけだ。

ごん:人生の晴れ舞台が来たと。

団長:「お客さんに喜んでもらわないかん。さあ、ここが俺の一生の働き処だ!」いうて丼の中に入ってきたのに、食べられもせずに捨てられるって、そんなかわいそうな野菜が他にあるか?

H谷:ははははは(笑)。

ごん:まあ厳密に言うと、ショウガや大根おろしも多少は捨てられてますけど、確かに必要な量以上のネギを入れて捨てるいうのはちょっとね。

団長:しかし、これはまだマシな方や。ネギに対する一番理不尽な扱いは、「同じネギなのに、いる場所によって評価がひっくり返る」ということや。

ごん:と言いますと?

団長:さっきの話で言うと、みんな、大皿の中に入ってるネギは何の抵抗もなく自分のうどんの上に取って乗せるのに、そのネギがショウガや大根おろしの大皿の中にスプーンからポロッと入った瞬間、「汚らしい」って、どういうことやねん!理不尽やないか。

ごん:確かに。

団長:天かすの大皿の中にゲソ天のカケラが入ってたら、「当たり!」とか言うて喜んで取るだろうが。ほんだらショウガや大根おろしの大皿の中にネギが入ってたら「当たり!」言うて一緒にすくって取ったらよさそうなもんやのに、何で「汚らしい」ってなるんや。

H谷:まあ、ねえ(笑)。

団長:というわけで、取ったのに捨てられたり、居場所が変わっただけで理不尽に「汚らしい」と言われるネギに、みなさんぜひ、温かい眼差しをぜひ向けてやっていただきたいと。

ごん:わかりました。これからみんな、ショウガや大根おろしの大皿の中にポロッと入ってるネギを見つけたら「当たり!」言うてすくいましょう。まずは団長から率先してお願いします。

団長:いや、それはちょっと、急に言われても…(笑)。

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