「釜あげうどん」は謎のメニュー?!

団長：讃岐うどん巡りブームが来てからここまで15年ぐらい、すごい数のうどん巡り客が来てるやんか。

ごん：はいはい。

団長：ほんで、ブームは一般店ではなくて「怪しい製麺所型店」で起こったから県外客の大半がそういう店に行くんやけど、何しろ香川県人でも「どないして食べたらええんや」と迷うような店に県外からドーッと押し寄せるもんだから、いろんな店で失敗談がいっぱいあるんだ。

ごん：多々あるでしょうね。小さいものから大きいものまで。

団長：そこで、次の6月1日発行予定の『インタレスト』で、それを一挙に集めて集大成しようという企画が進行中なんよ。

ごん：何のためにそんなモノを集大成するんですか。

団長：そんなもん、目的は「笑いたい」やないか。

ごん：あっはっはっは！アカデミックでも何でもなくて（笑）。

団長：ま、バカデミックということでね（笑）。ところが、学生に聞き込みに走らせてもちっとも集まらんので、そこでハタと気がついて「H谷川君に集めてもらおう」ということになってね。

ごん：適任です。

団長：そしたらＨ谷川君が今日の時点ですでに数十件集めてきているというので、その中からちょっとだけ、『インタレスト』に先駆けて『うどラヂ』で紹介してもらうことにしました。

ごん：いいですねえ。昔からよくね、セルフのダシの入れ方がわからないとか、醤油うどんを頼んで醤油をドボドボにかけたとか、いろいろありますからね。

団長：ま、そのあたりは映画『UDON』でも出てきたような定番エピソードやけど、それ以外の話も結構出てきたらしい。

Ｈ谷：今、20件ぐらい集まってるんですけど、その中で一番多かったのは「釜あげのつけダシの方ではなくて、湯を張っている麺の方に薬味を入れる」というお客さん。釜あげのある店のほとんど全部から、同じ話を聞きました。

団長：ほんまかー！

Ｈ谷：「失敗と言えばそれ」みたいな感じで。

団長：どういうことやねん。釜あげを頼んだら、揚げ湯と一緒に麺が入った丼かタライが出てきて、一緒につけダシが付いてくるわな。

ごん：それがワンセットですね。

団長：ほんで、つけダシに入れる薬味のネギやショウガが別皿にあって、それをお好みでつけダシの中に入れるやん。それを湯を張った麺の方に入れてどうする。そのままうどん食ったら、白湯の味しかせんやないか。

Ｈ谷：味がしないから、その上からつけダシもかけてしまうんですって。

団長：ダシまで行くんか！めちゃめちゃダシが薄まるやん。

Ｈ谷：そうなんですよ。

ごん：それ、県外の人は「釜あげうどん」が「つけ麺」だという認識がなかったりするんじゃないですか？

団長：そばやラーメンの「つけ麺」を知ってたら、普通、想像できるんちゃうか？

ごん：いや、「釜あげうどん」はざるそばやつけ麺タイプのラーメンと違って「麺が湯に浸かってる」という状態ですから、一瞬「これでできあがりのうどん」と思ってしまうんじゃないですか？

Ｈ谷：湯に浸かってたら、何かダシが入ってるような感じがするんじゃないですかね。

団長：なるほど、そういうことか。

Ｈ谷：ちなみにですね、「釜あげうどん」の紹介で麺の方に薬味がかかった写真をずっと載せている観光系の雑誌があるんです。

ごん：ただの麺の写真じゃ味気ないと思ってネギとか乗せて写真撮ったんですかね。あるいは、ただの無知だったのか。

団長：そういう間違った讃岐うどん情報が後を絶たんねえ。

Ｈ谷：あと、釜あげで言うと丸亀の「歩」で、カップルで来店して彼氏は釜あげ、彼女はきつねうどんを頼んだらしいんですけど、まず彼女のきつねうどんが先に出て、その後、彼氏の釜あげのダシを出したんです。

団長：ま、釜あげの麺は茹で上がりのタイミングを待たないかんからな。

Ｈ谷：そしたら、彼女が自分のきつねうどんのアゲを、彼氏の釜あげのダシにつけて食べ始めたんですって。

団長：あっはっは！

Ｈ谷：それ以来、「歩」は釜あげのダシを出す時に必ず「釜あげのダシです」って言うようになったそうです。

ごん：あっはっは！

Ｈ谷：大将が「県外のお客さんに教えてもらいました」と言ってました。

ごん：けどそれはそれでね、おいしいような気がしますけど（笑）。

団長：「釜あげうどん」って、こっちでは当たり前やけど、全国的には結構「謎のメニュー」なんかもしれんな。