麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:今回は、もう10年以上前に私が審査員で行った「讃岐うどん創作料理コンテスト」の顛末をレポートした回です。

ごん:なんか、昔からいろんな審査員やってましたからねえ。

団長:RNCテレビの「アマチュアビデオ大作戦」、ヤマハのボーカル選手権、銭形まつりのダンス大会、三木町ベルシティのカラオケ大会…

ごん:ほんまに仕事選びませんねえ(笑)。

団長:全部タウン情報時代の若気の至りじゃ。

H谷:うどんの審査はないんですね。

団長:30代までは「うどんの人」じゃなかったからな。

創作うどんコンテスト(その1)

団長:こないだ、「さぬき青年会議所」から依頼があって。

ごん:さぬき市ですか。

団長:いや、丸亀や善通寺あたりを中心とした中讃エリアの青年会議所や。

ごん:ややこしいですね(笑)。さぬき市には青年会議所はないんですか。

団長:あっちの方には「東かがわ青年会議所」があるんやけど。

ごん:それ、さぬき市が独立して青年会議所を作ったら、絶対ネーミングで混乱するんじゃないですか?

団長:ま、そこはそれで(笑)、その「さぬき青年会議所」から連絡があって、何かのイベントで、高校生あたりを対象にした「讃岐うどん創作料理コンテスト」というのを企画していると。で、「つきましては、審査員をやってもらえないか」という依頼がありまして、私は頑なにお断りをしたんですが(笑)、断り切れずに先日、行ってまいりました。

ごん:どうだったんですか?

団長:これがな、予想外に何か、みんな一生懸命作るんだ。

ごん:そらそうでしょう(笑)。コンテストに出てきたんだから、それなりに頑張らないと。

団長:どこかの調理室みたいな会場で、男子高校生3人のチームとか学校で料理の何かをやっている高校生3人組とか楽しいお友達2人組とか、若い子が全部で8チーム出てきて、1時間でうどんを使った創作料理を作る。それを、4人だったか5人だったかの審査員が点を付けて優勝チームを決めるという。

ごん:まあそういうことでしょうね。

団長:ほんでの、優勝したのが、何か豆乳ダシの味が付いたみたいなのに豚肉とか白菜とかニンジンとかを細かく刻んだのを入れて、グツグツ煮込んで…

ごん:豆乳鍋じゃないですか。

団長:あ、豆乳鍋か。そのおいしい豆乳鍋みたいなのに、解凍した冷凍うどんが入ってあるんだ。

ごん:うどんの創作料理ですから、うどんを入れないとね(笑)。

団長:俺、どっちかというと豆乳系とかグラタンみたいなクリーム系とか、あんまり好きでないんやけど、点付けないかんから恐る恐る1本だけ食べてみたら、これが意外とうまいんよ。昔、ねっくが担当しとったラジオ番組に呼ばれて浅草の「うどんダイニングこむぎ」いうおしゃれな創作うどんの店に行って笑福亭鶴光さんとしゃべりながら食べた「豆乳ナントカうどん」とよく似た味に仕上がっとる。

ごん:浅草のうどん屋は知りませんけど(笑)、基本、豆乳鍋にしたらたいてい同じような味に仕上がりますからね。

団長:だからまあうまいんやけど、創作というには少し“ありもの”かなという感じがしたんよ。そしたら、その丼の横にレンゲが置いてあって、レンゲの中に何か色の付いた寒天みたいなのが入っとる。なんかぐちゃぐちゃっと潰れた、あれ、何て言うん?

ごん:ジュレ?

団長:ジュレ!そうそう、ジュレって言いよったわ。お前よう知っとるのー。あれがついとんだ。「これどうするん?」って聞いたら、「豆乳ダシにつけて溶かしながら食べてください」って。最初半分は豆乳のままで食べて、半分ぐらい食べたら味変でそれをやれって。そのジュレの味がね。

ごん:ポン酢かな?

団長:何でわかるんや! 

ごん:まあ大体やろうとしてることは(笑)。

団長:すごいのー!さすが、家にワインセラーがあって自分で小料理をする男や。すると、それもありきたりの取り合わせなんか?

ごん:ありきたりというか、まあ料理で、創作で、豆乳鍋で、っていう流れできたら、そこにポン酢のジュレはそんなに突拍子もない組み合わせというわけではない。

団長:何や、ほな高得点を付ける料理ではなかったんか。

ごん:まあ、それはそれでうまかったらいいんじゃないですか?

団長:それがな、入れたら味が化けるんよ。まさに「谷川米穀店」の「醤油に青唐辛子で半分食べて途中から酢を入れたら化ける」いうのと全く同じ感じで、なかなかクオリティが高い。あれはまんま「明水亭」で出してもいけるんちゃうかと思うような出来やったわ。それにみんなが高得点を入れて、とりあえず総合得点で1位になった。

ごん:けどまあ、それほど「斬新なアイデアが出てきた」というわけではなさそうですね。

団長:まあ、プロのプランナーじゃないからね。続いて第2位は、どっかの高校の男の子3人チームの、「うどんコロッケ」。

ごん:ほう。

団長:コロッケの中身が、「ぶつ切りのゆでうどん」や。

ごん:それだけ?

団長:いや、ぶつ切りうどんにつなぎで何かのクリームみたいなのを混ぜて、ちょっと何か技をしてあって、それなりにうまいんや。サーターアンダギーぐらいの大きさの丸いコロッケで、コロモに青ノリをまぶしてあって。

ごん:はいはい。

団長:ほんでね、この上位2つは次の大会に進むらしいんで、講評の時に他の審査員が「意外とおいしい」とか「かわいい」とか誉めるばっかりやったから、俺は「ビジュアルが悪い」ってちゃんとアドバイスしてやった。

ごん:あからさまにダメ出しじゃないですか(笑)。

団長:まあ普通に丸いボール型でおかしくはないんやけど、「ビジュアルに差別化度合いが低すぎる」言うて。こういう見た目のコロッケは、どっかの居酒屋メニューにたぶん同じようなものがある。そうでなくて、巨大にするとか、逆にビー玉ぐらいちっちゃくするか、あるいは形を変えて三角にしたり棒状にしたり板状にしたり、サイコロ型にしたりピラミッド型にしたり金平糖型にしてみるとか、パッと見た瞬間に「わ、これは見たことない」っていうぐらいの差別化度合いがあると、ポイントが高くなるって。

ごん:コンテストって、そういうところも大事ですからね。

団長:あとは、またゆでうどんを細かく切ったやつを薄く平べったく伸ばして、フライパンで裏表をコゲコゲに焼いて煎餅っぽくして、それを上下2枚で肉とレタスとトマトを挟んであるという作品があった。

ごん:それはおいしそうですね。

団長:そうなんや。最初にコゲコゲのぶつ切りうどん煎餅みたいなのを作ってるのを見て、「うわ、それだけでうまそう」って。ちょっと厚めのお焦げや。これ、餡でもかけたらうまいぞって。ほんで、できたやつを薄い紙の袋に入れてあるんや。

ごん:おしゃれじゃないですか。

団長:あれ、「あのまま写真撮ってマクドナルドのメニュー表の中に紛れ込ませとったら注文来るぞ」って言うくらいの、とてもおしゃれな作品があった。ほんでみんなが「うわー、これはおいしそう!」っていいよったんやけど。

ごん:何で上位に入らんかったんですか。

団長:嚙んだら、ものすごく歯にくっついて、実に食べにくい。

ごん:あっはっはっは!

団長:みたいなのがあと5つもあるのに、ディレクターから巻きが入りましたので、衝撃の予選落ち作品は次週に(笑)。

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