麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:「讃岐うどん創作コンテスト」が2週も引っ張ることになって、誠に申し訳ございません。1本で収めるべきかと思ったんですけど、最近仕事が立て込んじゃって(笑)。

H谷:2本に分けて1本分を稼いだと(笑)。

ごん:ちなみに前回、「衝撃の予選落ち作品」って言ってましたけど、8チームだけ出場したんだから予選落ちじゃないですよね。

団長:いや、コンテスト的には予選落ちに匹敵する作品ではあった(笑)。

創作うどんコンテスト(その2)

団長:先週の続きですが、コンテストの第4位は、ダシを固めて、それをかき氷器に入れてシャーッと削ってうどんにかけてあるというやつ。

ごん:それは僕も考えたことありますよ。

H谷:というか、それ、「百こ萬」に「いたかけ」いうメニューで出てますよ。ダシがシャーベットのやつ。

団長:あー、やっぱり“ありもの”か。あとは、うどんをピザにしたチームもあったけど、何かこう、今ひとつ目を見張るような発想がなかったんよな。「俺の『発想力開発論』の授業を受けなさい」と言いたくなるような(笑)。

ごん:まあ、発想力なんて学校ではなかなか教えてくれんのでしょうね。

団長:そんな中で1チーム、女の子2人組の。

ごん:あの、何か今の流れからすると嫌な予感しかせんのですが(笑)。

H谷:ははははは(笑)。

ごん:この流れで「女の子2人」と聞いただけで、すご~くね、とんでもないものが出てきそうなニオイがしたんですけど、どうなんでしょう。

団長:いやいや、そんなに妙なもんではないんぞ。

ごん:そうなんですか。まあまあコンテストですからね。

団長:ただ、何かね、一斉に調理が始まったんやけど、その2人のチームだけ、他のチームとは違う動きをしている。

ごん:あっはっは!いかん、もう笑いよる(笑)。

団長:会場はどこかの調理室みたいな部屋でね、各チームともガスコンロに火を付けて湯を沸かして、冷凍うどんを戻しながら、同時に野菜を切ったり、別の鍋で具材みたいなのを作ったり、忙しそうにいろいろやってるんだ。

ごん:やってるでしょうね。

団長:ところが、その女の子2人組チームは、「冷凍うどんを茹で戻している」という以外の動きが見当たらんのだ。

ごん:あっはっはっは!

団長:「何を作るんだ、このチームは」と。

ごん:料理のコンテストなのに。

団長:その後、もう一つの鍋で別に湯を沸かし始めたんやけど、見たら調理台の上に具材らしき物が何もないんだ。

ごん:えー。

団長:野菜もない、肉もない、揚げも豆腐も果物もない。他のチームは台の上がいろんなもので一杯になってるのに、こっちはきれいさっぱり。「ん?」と思って、エントリーシートを再確認したんやけど。

ごん:あ、事前にどんなものを作るのかは申告してるんですね。

団長:うん。そしたら、「冷凍うどんを茹でて、最後に梅干しをほぐして乗せて、爽やかなうどんを作ります」みたいなことを書いてある。丼の中に麺が入って、その上に梅干しが載っているみたいなイラストも付いていて。

ごん:創作うどんとしての完成予想図が書かれているわけですね。

団長:ほんで俺は会場をぐるぐる回って、他のチームはいろいろしよるから「それ何?」とか聞きながらチェックするわけだ。ところがそのチームは湯を沸かして冷凍うどんを戻しよるだけやから、質問のしようがない。ほんで他の所を回ってもう一回その子らのところに行ったら、「できました」って言うんだ。

ごん:あれ?

団長:他のチームはまだまだやってるのに、1時間の持ち時間でまだ30分ぐらいしか経ってないのに、「できました」って言うんだ。見たら、もうすでに丼の中に麺が入って、そこに薄い色のダシがかかって、そこに梅干しの肉のほぐしたやつがポンと乗ってある。

ごん:あら、シンプルなうどん。

団長:それを見て、パッと見は何の変哲もないかけうどんに梅干しが乗っただけやけど、ダシの色が、普通のうどんのダシの色と違うのに気がついて、「おそらくこのチームはダシに全てを賭けているのではないか?」と思ったわけだ。

ごん:エントリーシートにダシの明細は書いてないんですか?

団長:うどんの説明はいろいろ書いてるんやけど、ダシには全く触れてないんよ。ほんでちょっとダシの香りを嗅いでみたら、その瞬間、私の頭にあるものがくっきりはっきり浮かびました。そこで、あえて「これ、何を使ってるん?」って聞いたら、「いや、そこは、まあ、あの…」とか言うて口を濁すんだ。

ごん:おやおや。

団長:そやから「これは割と簡単にできるんかなあ」って言うたら、「まあそんなに難しくはないですけどお」とか言いながら、だんだん半笑いになっていくんだ。

ごん:あれー?(笑)

団長:しょうがないから、指摘した。「正直に言え。これは永谷園の松茸のお吸い物だろう!」って。

ごん:あっはっはっは!ばれますよね、あれは(笑)。

団長:湯で戻した冷凍うどんに、「永谷園の松茸のお吸い物」をたっぷりかけてあるんや。たぶん2袋か3袋入れて多めに作ってうどんにかけて、その上に梅干しの肉をちょっと乗せてある。

ごん:それは、うまいですよね。

団長:うまい。

ごん:あっはっは!

団長:ほんまにうまいんぞ。あれ、受験勉強の夜食とかに絶対行けるぞ。

ごん:でもうまいけど、コンテストとしては「どうしよう」という感じですよね(笑)。

団長:そうなんよ。だから「うまいけど、これはコンテストやからなあ」って言うたら、「私らもここに来て、“うわ、みんなあんなんちゃんと作りよんや”と思って、今、帰りたいんですけど」って。

ごん:あっはっはっは!それ、人数合わせで無理やり呼ばれた子じゃないですか?

団長:たぶんそう(笑)。しかし、実に気持ちのいい若者2人やったね。

ごん:ちゃんとそれ、満点入れました?

団長:その発想も含めて一瞬、高得点を付けようかと思ったんやけど、いやこれ、さすがに高得点ではない(笑)。

H谷:ははははは(笑)。

団長:デザイン性だとか創造性だとかが各10点満点で5項目あったんやけど、残念ながら、あのチームの「永谷園のお吸い物に梅干しを乗せただけ」っていううどんのすばらしさを採点する項目が、どこにもなかった。

H谷:ははははは(笑)。

団長:「よく見つけた」みたいな採点項目がどこにもなかったから、コンテストとしては、「出場してきたけど予選落ち」みたいな作品や。けど、あれはなかなかよかった(笑)。

ごん:簡単にすぐできますし、おいしそうですからね。

団長:というわけで、コンテストの模様はその日の夕方のテレビでも翌日の新聞でも紹介されたんやけど、彼女たちの作品は一切触れられずに終わったため、『うどラヂ』でこうやってきちんと、その足跡を残してあげようと思った次第です。

ごん:彼女たちは残して欲しくなかったかもしれませんけど(笑)。

団長:しかしあれを見た時に、お茶漬けとかお吸い物とか、あの手のインスタントのやつ、冷凍うどんを買うてきていろいろ合わせたら、結構食えるぞ。

ごん:CMでもインスタントの何かを家庭でアレンジするみたいなことを時々やってますけど、ああいうの、結構うまいんですよね。

団長:ちょっと目からウロコが落ちて、讃岐うどんの可能性を少し再認識したという、「讃岐うどんin永谷園の松茸のお吸い物」でした(笑)。

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