編集 田尾 和俊
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団長:では前回の続きで「イナリの天ぷら体験記」の後半をどうぞ。
イナリの天ぷら
団長:というわけで、知らないご家族からガン見されながらも、「てっちゃん」のワイドな注文カウンターのところに行きました。
ごん:ほんでね、俺がトレーを取ろうとしたんよ。トレーを取って、注文してうどんをもらって、天ぷらを選んで、レジに行くからね。そしたら団長が「ちょっと待て待て!」言うから「どしたんですか」言うたら…
団長:もし「イナリの天ぷら」がなかったら「てっちゃん」に来た意味がないんやから、まずは存在の確認やないか。
ごん:ひどい話でしょ。ここまで来て並んでるのに、「イナリの天ぷら」がなかったらそのまま帰ろうとしてましたからね。
H谷:ははははは(笑)。
ごん:だから仕方なく俺が斥候になって天ぷらコーナーまで見に行ったら、山盛りの「イナリの天ぷら」があったんよ。
団長:それを見た瞬間、俺の頭の中で「えー?俺、今日の昼飯、これかあ…」って。
ごん:いやいやいやいや!それを食べに来たんですから。
団長:いやまあ確かにそうやけど、「イナリの天ぷら」やぞ。イナリ丸ごとコロモ付けて揚げてあるんぞ。これがもしハズレやったら、俺に残されたキミらより数少ない食事回数のうちの1回が不本意に終わるやんか。
H谷:そらそうですけど、そこは麺通団団長ですからちゃんと探検心を出してもらわないと。
団長:出したがな。「イナリの天ぷら」1個と、えー、中華そばを。
ごん:あっはっは!
H谷:「ラう飩(らうどん)」ね。
ごん:俺はちょっとひねって「カレーラう飩」。
H谷:誰もうどん食べてないじゃないですか!
団長:だって相方が「イナリの天ぷら」やぞ。
H谷:よくわかりませんが。
団長:ほんでね、あ、大事なことを言い忘れとった!ごん、「イナリの天ぷら」取ってないねん!取ったの俺だけやぞ。
H谷:何しに行ったんですかごんさん!
ごん:いやちょっとみんな、落ち着いて落ち着いて。冷静に考えてくださいよ。団長がH谷川君に言われて「イナリの天ぷら」を食べに行ったんですよね。それだけですよね。俺、関係ないですよね、「イナリの天ぷら」。
団長:H谷川君、自分に置き換えて考えてみな。ごんが「イナリの天ぷら」を見つけて俺に「食べに行け」言うたとするわ。ほんで俺がH谷川君と一緒に行ったら、H谷川君も取るだろ?
H谷:ま、一応ね。取らないと…
団長:何やそのイマイチ歯切れが悪い返答は。あのな、団員として「こんな珍しいものは滅多に食べる機会がないんだからここで体験しておかないと」って普通思うだろ。
H谷:まあね、ええ。
ごん:ちょっと半笑いで返事しましたよ(笑)。
団長:それをちょっと危険な匂いがするからって団長だけに食わすなんて、そんな団員がおるか?
ごん:確かにね、危険な香りがしたのは事実で(笑)。
団長:言うとくけど俺はな、H谷川君に聞いた瞬間に危険な匂いはプンプンしてたんだ。だって、「イナリの天ぷら」やぞ。
ごん:あっはっはっは!いや僕はね、最初聞いた時は「イナリを天ぷらにしとんやろなー」ぐらいしかイメージが湧かなかったんですよ。「天むすみたいなんかなー」とかいうボヤッとしたイメージで。で、現物を見たら、確かに「イナリの天ぷら」。
H谷:そうでしょ?
ごん:けど、俺は取らんなあ(笑)。
団長:それで仕方がないから俺が一人で挑戦することになったわけだ。まず、大きさは想像してたよりちょっと小ぶりで、とても食べやすい大きさではある。
H谷:ええええ。
団長:食べやすい大きさではあるけども、「イナリの天ぷら」や。
H谷:ははははは(笑)。
ごん:そこ、精神的にブレーキがかかりますよね(笑)。
団長:ブレーキは1回踏んでしまう。一気に「ギュー!」でなくて、ポンピングブレーキや。で、とりあえず箸でつまみ上げて口のそばに持ってきたら、最初に天ぷらのコロモの香りがパッとくるんや。まあまあ普通に食欲をそそる天ぷらのコロモの香りが。
H谷:きますね。
団長:そこからガジッと嚙んだら、コロモの食感はなかなか軽くてサクッときて、そこからモグモグと2口ぐらい嚙んだ後、俺が何とコメントしたか、覚えとるか?
ごん:覚えてますよ。あんな予想外のコメント、忘れようがない(笑)。
団長:ごんが「どうですか?」って言うから、私は最初にパッと頭の中に浮かんだ言葉をそのまんま、ごんに伝えました。
H谷:はい。
団長:「ドーナツやんこれ」。
ごん:あっはっはっは!
H谷:ドーナツですか!
ごん:イナリの天ぷら食うて、「ドーナツやん」って言うわけよ、このおじさんが(笑)。
団長:ごんが俺に「どうですか?」って聞いた時、おそらくごんの頭の中に俺が答えそうな表現とかコメントがパパッといくつか浮かんだはずなんだ。ところが、その中に絶対にないコメントが、「ドーナツ」(笑)。
ごん:最初に聞いた時に、「はあ?」って言うたわけだ。「中身イナリなのに、何を言うとんやこのおっさん」と。
団長:見たら明らかに頭の中が「?????」みたいな顔をしとるから、「お前ちょっとこれかじってみ」って渡したんだ。ほんでごんがかじって一言、「ドーナツですねえ」って。
ごん:あっはっはっは!
H谷:えーーっ!ごんさんも!
ごん:いや、あれはな、見事にドーナツ!想像したドーナツを100としたら、95ぐらいドーナツやった。
H谷:イナリが?ドーナツ?
ごん:いや、寿司飯がドーナツみたいに甘いわけじゃないけど、食感は見事にドーナツ。
団長:揚げたコロモの味と香りが最初にパッときて、次に普通に寿司飯のネチャッとしてもっちりした感じの食感が来るんだ。その「油でカリッと来て、もっちりが来る」っていう、この組み合わせが明らかにドーナツ!
ごん:しかも、酢飯の酢はちょっと飛んでる感じでね。
団長:そうそう。もっとちゃんと酢飯の味がパッと来たらまだイナリなんやけど、あれたぶん、油で揚げる時に酢が飛んでるよな。それがさらにドーナツ感を増幅させてる。
ごん:あれ、もう「ドーナツ」でいいんじゃないですか?
団長:ドーナツやドーナツ。というわけで、「長楽」の「うどんドーナツ」と「てっちゃん」の「イナリの天ぷら」を今、讃岐うどん界の「ドーナツ・ツートップ」に認定します。
H谷:だからドーナツじゃないですって。
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