編集 田尾 和俊
184
団長:讃岐うどんめぐりブームが起こる1990年代中盤あたりまで、「讃岐うどん」と言えば「かな泉」一強の時代で、「『かな泉』を知らない人は香川県民じゃない」と言っても過言ではなかったのですが、今や巷に「かな泉」を知らない世代があふれているとは、俺ら、長生きしすぎたかなあ。
H谷:そんな大げさな(笑)。
ごん:「かな泉」がなくなって、もう何年ぐらいになりますかねえ。
団長:2010年には丸亀店がまだあったから、たぶんまだ15年経ってないと思う。
「かな泉」の時代
団長:オープニングお便りです。
兵庫県姫路市でうどラヂをポッドキャストで聴いている「みさの」と申します。先日は短い内容のないメールがエンディングの尺にちょうどよかったのか読んでいただき、ありがとうございました。
団長:そんなことないですよ。どんなに尺にぴったりの長さでも、読まないお便りはありますからね。
H谷:こらこら!
久しぶりに『超麺通団3、4』を読み返していたら、「おか泉」さんや「もり家」さんなど、「かな泉」で修業した大将の店が集まって何かの会を作っているとかいうことを書いたページがありました。ということは「かな泉」さんのファミリーも結構な数になると思うんですが、いろんな本を読んでいても「かな泉」さんの本店というのを見かけたことがありません。その辺のところを話せる範囲でいいので教えていただけませんか?
ごん:「かな泉」さんは、残念ながらもうなくなっています。
団長:そうなんです。「かな泉」は2010年頃まではまだ何店かあったんですが、もうありません。昭和の時代は「讃岐うどんと言えば『かな泉』」と言われるぐらいだったから、「かな泉」出身者は結構おると思うけど。
H谷:今やってる店で、確実に4軒はあります。
団長:「かな泉」のテレビCMもメチャメチャ有名だったよな。「♪かないずみ~」いうやつ。音階で言うたら「♪ソララソラ~」や(笑)。
ごん:たぶん香川県民の40代以上の人で知らない人はいないんじゃないですか?
団長:40代以上の香川県民に「頭に残っているローカルCMのフレーズは何ですか?」って聞いたら、トップ2は「かな泉」と「ビデオインロッキー」。
ごん:あっはっはっは!たぶん間違いない(笑)。
団長:全盛期には県外にも店舗展開してて、大阪の梅田のJRの横の大丸にも「かな泉」が入ってた。あと、昔、『カーサ・ブルータス』の取材で勝谷さんらと東京のうどん屋を2日で11軒食べ歩きをした時に、ある店で大将に「どこで修業したんですか?」って聞いたら、「徳島の『かな泉』で修業した」って言われたことがあるんやけど。
ごん:あっはっは!
団長:そういう詐欺みたいな店で名前が使われるぐらい、「かな泉」という名前は業界に轟いていたという一例です。
ごん:本店は最初、大工町にありましたよね。
団長:フェリー通り沿いに、純和風のええ感じの店を構えてました。
ごん:それで、店の入口の横の外から見えるガラス張りでうどんを打ってるところが見えるという。
H谷:あの「うどんの手打ち実演」いうパフォーマンスは、大工町の「かな泉」本店が最初に始めたとか言われてましたよね。
団長:それからもう一つ、「かな泉」には「『うどんすき』を世に出した」という功績がある。「うどんすき」はご存じの通り、野菜や魚介類の鍋物の最後をうどんで締めるという「うどんの鍋料理」みたいなやつで、当時でも3000円ぐらいした。おそらく讃岐うどん界で最も豪華なメニューで、他にも出してた店はあったけど、テレビや新聞で一番宣伝して広めたのは間違いなく「かな泉」。「うどん寿喜」とかいうめでたい名前を付けてね。
H谷:おいしかったですよね。
団長:え?豪華メニューやのにH谷川君も食べたんか?
H谷:僕には高すぎるメニューなんですけど、団長がやってた「讃岐うどん巡礼88カ所」の何回目かで「メニュー巡礼」とか言って、回る店の課題メニューに「かな泉」の「うどん寿喜」が入ってたんで、泣く泣く行ってきました。
ごん:あっはっは!
団長:あの企画にそんなメニュー入れとったんや。ごめんごめん(笑)。
ごん:でも、「かな泉」がなくなったのは讃岐うどん界の大きな損失の1つなような気もしますけどね。
団長:私もそう思います。「かな泉」全盛期の後、讃岐うどんめぐりブームが起こって全国から「安い、おもしろい」の「製麺所型店」に客が殺到して「一般店」がちょっと下火になったけど、そのうち県外客があふれて「一般店」にもブームの影響が広がり始めたら、俺は「かな泉」が絶対に大きい戦力になると思いよったんだ。そしたら、店がなくなってしまった。
H谷:「うどんすき」も、今は大きめの一般店が予約制でやってたりするぐらいですね。
団長:ようやく「郷屋敷」とか「山田家」とか「おか泉」とかを皮切りに高級志向のうどん店がブームの一角を担う時代になってきたけど、ここに「かな泉」がおったらもっとすごいことになってたと思うと、惜しいなあ。
ごん:というか、何で閉めたんですか?
団長:そこは私は噂レベルの話しか知らんので、帝国データバンクさんとかに聞いてください。教えてくれんと思うけど(笑)。
バックナンバー
-
#8 「うどん屋の数と電柱の数」 (2022.02.21更新) -
#7 「“JK”の、「柳川」を紹介した「魂の情報発信」」 (2022.02.14更新) -
#6 「栗林公園・花園亭の「朝粥」でうどん巡りスタート」 (2022.02.07更新) -
#5 「映画『UDON』の配役と、モデルになった麺通団員」 (2022.01.31更新) -
#4 「丸亀市役所担当者の「うどん屋の問い合わせ」に対する対応が素晴らしい!」 (2022.01.24更新) -
#3 「温めるんならそこの釜で…」 (2022.01.17更新) -
#2 「ブームの真っ只中に「ブームが終わった」と言う方々が…」 (2022.01.10更新) -
#1 「『うどラヂ』は映画『UDON』のプロモーション番組として始まった」 (2022.01.03更新)




















