編集 田尾 和俊
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団長:讃岐うどんのイベントって、近年かなり少なくなってきたよな。
ごん:そう言われれば確かに。
団長:昔は今より多かったぞ。ブームになる前の1980年代から90年代前半は毎年7月頃に「さぬきうどんまつり」があって献麺式やうどん無料サービスをしよったし、四国新聞も毎年50軒ぐらいのうどん店を集めて「さぬきうどんラリー」をしよったし、ブームが来てからは1990年代終盤から2000年代あたりは俺らが毎年「讃岐うどん巡礼88カ所」と「讃岐うどん王選手権」をやってたし。
ごん:高松の中央公園でうどん屋の大将を集めて実演大会みたいなのもやりましたよね。
田尾:あったなあ。確か、「おか泉」の大将も出てきてくれた。
ごん:今は何をやってます?
H谷:大きなのは「年明けうどん大会」ぐらいですかね。
団長:ただ、「年明けうどん大会」は全国のいろんなうどんを集めたイベントやから、「讃岐うどん」に特化したイベントではないからなあ。
H谷:いずれにしても、たぶん讃岐うどん巡りブームがピークを迎えた2000年代が一番、うどんイベントが多かったと思いますね。
団長:そういうわけで、そんな讃岐うどんイベント花盛りの2000年代にどさくさに紛れて敢行された、マニアックなうどんイベントの話題を一つ(笑)。
有名店の大将7人衆による「秘密のうどんイベント」レポート
団長:こないだ、俺とH谷川君が丸亀でメチャめちゃおもろいうどんのイベントに行って来たんや。
ごん:人には言えない、あのめでたいイベントですね。
団長:そうそう。何がめでたいのかも言えないけど(笑)、今日はそのレポートを。
ごん:お願いします。
団長:簡単に言うと「うどんを作ってお客さんに振る舞う」というイベントなんやけど、会場に何と、有名なうどん屋の大将が何人も集まって、何人やったっけ?
H谷:7人です。
団長:その有名大将7人衆が、うどんを作る各工程をパートごとに別々に担当していって、最後に出来上がったうどんをみんなが食べるというイベントなんや。
ごん:それ、すごい画期的なイベントですよね。一体誰が段取りしたんですか?
団長:H谷川君や。何がめでたいか言えんけどあるめでたいイベントの中の出し物の一つで、H谷川君が7人の大将を調達した。
ごん:素晴らしい。
団長:ラインナップいくよ。まず、「清水屋」の大将が粉を調達してダンゴを作って、それを「善通寺白川」の山下君が生地に仕上げた。
H谷:で、それを会場に持ち込んで、会場では「踏み」の工程からだったんですけど、「踏み」の担当が坂出の「日の出製麺所」の三好さん。
ごん:おー。
団長:その次が、「打ち」の工程で、
H谷:打ったのが豊浜の「上戸」の大将の上戸君! と、「清水屋」の大将…。
ごん:こらこら、テンション下がっとるやんか(笑)。
団長:いつものH谷川君の愛に満ちあふれたジョークやんか。どっちも次代の讃岐うどん界を担う素晴らしい大将や。で、まず上戸の大将がビシッとうどんを延ばして、
ごん:ほうほう。
団長:上戸君が完璧に仕上げたところで清水屋の大将にバトンタッチして、清水屋の大将が、それに粉振って撫でたんやったっけ?
ごん:あっはっは!
H谷:違いますよ。ちゃんと2人で分担して延ばして、それを再び「善通寺白川」の山下君が手包丁で切って、それを茹でたのが丸亀の「夢う」の佐藤さんです。
団長:俺はちくわ天を食いたいのに、頼んでもないのに「お待ちどおさま~」いうてイイダコ天を持ってくる「夢う」の大将(笑)。
H谷:それで、茹で上がった麺を釜から取るのが、「がもう」のガモムスさん。
ごん:釜から取るだけですか。
団長:あれは簡単そうに見えて、誰でもできるもんでないんぞ。
ごん:何か熟練の技がいるんですか?
団長:まず、熱いのを我慢せないかん。
ごん:技術じゃないじゃないですか!
H谷:あの、次行っていいですか?
団長:あ、どうぞ。
H谷:で、最後、釜から取ったばかりの釜あげ麺をたらいに入れて客席に運んだところで、「香の香」の大将がダシの入った徳利を持って出て来て、みんなが香の香のダシで食べるんです。
ごん:おーっ!
団長:ちなみにそういう工程でやると、大将それぞれ自分が一人で作るんと違って一部分だけの担当やから、出来上がりの状態がみんな想像できんのよね。
H谷:大将たちにしてみれば、ちょっとやりにくいところもあったかもしれませんね。
田尾:しかし、さすがにみんな人気店の大将やから抜かりはない。
ごん:で、食べてどうだったんですか?
団長:一言で言うと、香の香のダシはうまい!
ごん:おーい! 他の大将、これ聞いてたら一斉にずっこけますよ(笑)。
H谷:いや、ほんとそうなんですよ。やっぱ、あのつけダシは万能ですよね。ただ…
ごん:ただ?
団長:イベントの最初に、「今からこの7人がここでうどんを作ります!」いうて、会場のスクリーンにテーマ曲をバックに一人ずつ大将の画像を写して紹介したんや。「豪腕大将、山下君!」言うたら腕を組んでポーズした山下君の映像が出て、その後、山下君本人が出てくるみたいに。
ごん:なかなかカッコいい紹介じゃないですか。
団長:で、次々に大将が出てきて、一番最後に「そして御大! 香の香の大将です!」言うたら、
H谷:「香の香」の大将が床に這いつくばって、匍匐(ほふく)前進しながら出てきたんですよ!
ごん:あっはっは!
H谷:あの「香の香」の御大がですよ!
団長:何の打ち合わせもしてなかったらしいんやけど、御大、すでにお酒もそれなりに入っていたみたいで(笑)。あとで聞いたら、香の香の大将はやっぱり一番の長老で戦争体験があるということで「ついやってしもた」とかおっしゃってました。
H谷:もうびっくりですよ。「御大(おんたい)」なのに「軍隊(ぐんたい)」で出てくるんですから。
ごん:うまいっ!
団長:さてそこで、香の香の大将がお酒も入っていい気分になってたようにお見受けしたので、「聞くならここしかない」と思って直撃インタビューをしました。
ごん:何を聞いたんですか?
団長:あれしかないがな。こないだこの番組で愕然とする発表があったやつ。
ごん:あー、「香の香のダシは女将さんでなくて大将が作っている」という話ですね。
団長:そう。俺は今までずーっと「香の香のダシは女将さんが作っている」と信じとったのに、H谷川君から「ダシは大将が作っている」という爆弾証言があったやつの確認や。
ごん:で、どうだったんですか?
団長:まず最初に「僕、ずーっと勘違いしてました。大将が作りよったとは全然知りませんでした」いうて謝りまして(笑)。
ごん:当然ですね。
団長:ほんで聞いたら、一番最初にダシを作りよったんは、やっぱり女将さんだって。で、女将さんは表で接客したりレジしたりするのに忙しいということで、そのうち大将が女将さんからダシを教わって作り始めたって。
H谷・ごん:そうだったんですか!
団長:これで俺の罪も半減した、ということでどうでしょう(笑)。
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