編集 田尾 和俊
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団長:我々現代人はついつい「今」だけを見て物事を判断しがちであるが…
ごん:何が始まるんですか?
団長:いかなる「今」もすべて、長い長い歴史の積み重ねの上に存在しているわけだ。
ごん:まだ話のオチが見えませんが。
団長:例えば人類も、どんどんどんどん遡って行ったら、古生代の生物に行き着くことになる。
ごん:まあ確かに、神が人間をお作りになったのでない限り、そういうことですわな。
団長:言うなれば、あのカンブリア時代に海の中で泳いどった巨大なゲジゲジみたいなやつの生き残りが、キミや。
ごん:いやまあ、反論できませんけど、何か反論したい(笑)。
団長:というわけで、今回は讃岐うどんの名店の系譜の話を一つ。
ごん:カンブリア時代からしたら、つい「今」の話じゃないですか。
「西森」の系譜
団長:お便りを頂いております。サンフランシスコのマフィンさんから。
先日はFM香川プレゼントの『インタレスト』を送っていただきましてありがとうございました。
ごん:サンフランシスコまで送ったんですか?
団長:もちろん。FM香川はちゃんと英語で宛先書ける。
海外まで送っていただいて本当にすみません。以前、沖縄の「ぴりんぱらん」の話題がありましたが、こちらからはカリフォルニアを中心に店を展開している「シーズ・キャンディ」のピーナッツ菓子を送らせていただきます。よろしかったら皆様で召し上がってください。
団長:あー、しもた。まだ寝起きやから、書いとる通りそのまま読んでしもた。
ごん:どゆこと?
団長:ちゃんと起きとったら、とっさに「よろしかったら団長様、召し上がってください」って読んだのに。「皆様で」だったら君らにも分けないかんが。
ごん:おかしいでしょ!
団長:しょうがないな、みんなで分けよう。えーと、めちゃめちゃ大量のプチプチで包んであるな。(バリバリ…)おー、何や大きい袋に入ったお菓子が出てきた。
ごん:なるほど、これはピーナッツの入ったキャラメルベースのお菓子ですね。
団長:想像するに、鉄板の上にピーナッツをバラーッと並べて、そこに溶かしたキャラメルを、ちょっとピーナッツの頭が出るぐらいの厚さに流し込んで…
ごん:5ミリぐらいの厚さですかね。
団長:ピーナッツが海に泳ぎに行ったら、ギリ「背が立つ」っていう状態や。
ごん・H谷:あっはっは!
団長:それが固まったものをハンマーで適当に叩き割って、適当な量を袋にガサーッと入れて袋をジャッと留めたという感じのお菓子です。
H谷:ほんとそんな感じです。
ごん:実にアメリカっぽいですなあ。いや、マフィンさん、ありがとうございます。
団長:というわけで、今回はこいつを食べながら、さらに包装用のプチプチが目の前にたくさんありますのでプチプチしながらお送りしたいと思います。では、あとはH谷川君に任せて、俺らは食って遊んで時間を潰そう。
H谷:何でですか。みんなで一緒にやりましょうよ。
団長:(プチプチ)
H谷:放送中にプチプチしない!
H谷:しょうがないですね。
団長:(プチプチ)
H谷:じゃあ最近拾ってきたネタで、実はですね、
団長:(プチプチ)
H谷:あの幻の名店と言われる伝説の「西森」なんですけど、
団長:(プチプチプチ)
H谷:ちょっと、プチプチで相づち打つのやめてもらえます?
団長:あ、すみません。
H谷:それでね、現存するお店でね、西森さんの親戚に当たるお店を発見したんですよ。
団長・ごん:えーーーっ!!!(プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチ!!!)
H谷:だからプチプチはええですから!
団長:めちゃめちゃ驚いた感じを出したんやんか。俺、27プチや。
ごん:僕も18プチは行きましたよ。
H谷:あ、ありがとうございます。で、その「西森の親戚」にあたる店はどこか? という話なんですけど。
団長:ということは、俺らが知ってる店か?
H谷:もちろんです。特に団長なんかはもう、大好きなお店ですね。
ごん:名前が西森さんとつながってたりする?
H谷:つながってません。
団長:西森は最初土器川の土手沿いにあって、一回移転したけど、どっちも土器川のあのあたりだろ? ほな、あのあたりで西森の匂いのする店は飯山の「なかむら」しかないぞ。
H谷:さすが団長! というか、こここそプチプチいかんのですか?
団長・ごん:あ、えーーーーっ!!!(プチプチプチプチプチプチプチプチ!!!)
H谷:ありがとうございます。今、50プチぐらい頂きました。
団長:ほんまに「なかむら」が「西森」の親戚か!
H谷:親戚なんです。飯山の「なかむら」の初代の大将の妹さんが嫁いだのが、西森の大将なんです。それで、その縁もあって、「なかむら」の初代大将が西森の大将にうどんの弟子入りしたんです。
団長・ごん:えーーーーっ!!!(プチプチプチプチプチプチプチプチ!!!)
H谷:「なかむら」の三代目のケンイチさんが、「なかむらうどんのルーツは西森です」って言うてました。団長がよく「西森」のうどんを「伝説になったけど忘れられない」と言ってましたけど、僕、この話を聞いてわかりましたよ。団長が記憶している「西森」のうどんは、「なかむら」の食感なんですよ。
団長:そうかー。そう言われてみれば、「西森」と「なかむら」のうどんは確かに同じ系統のニオイがする。
H谷:で、当時の西森の常連さんが今でも西森に来てるらしいんですけど、その常連さんが言うには「西森」の麺は「なかむら」ほど縮れてなくて、「なかむら」ほど細くはなくて中細麺だったけど、食感は一緒だったと。
団長:なるほどなるほど。
H谷:で、エッジは立ちまくりの、ケンイチさんとか二代目のなかむらの大将が言うには「エッジの立ち方は山内みたいな感じの見た目だった」そうです。でも、食べると柔らかくて、軟体系の伸びるコシだったそうです。たぶんそんな麺、現存する店では「なかむら」が一番近いと思いますけど、とにかく他にないオンリーワンの麺ですわ。
団長:なかむらって、飯山の「なかむら」と丸亀の土器町の「中村」があるやん。「やお」の方の。ほんで「やお」の方が飯山の「なかむら」よりちょっと太くてシュッとしとんやけど、西森の麺は「やお」の方に近かったような気がする。
H谷:団長、またまたさすがです。西森の大将にうどんを習ったのは「なかむら」の初代大将なんですけど、その「なかむら」の初代大将からうどんを直接習ったのは今の「なかむら」の大将じゃなくて、「なかむら」の大将の弟さんの「やお」の大将なんです。
団長:ほんまか!
H谷:ほんとです。ほんで飯山の「なかむら」の大将は、「やお」の大将に教わってるんです。だから、「西森」のうどんは「西森」→「なかむらの初代」→「やおの大将」→「なかむらの二代目」→「なかむらの三代目」と続いてるんです。
団長:うわー、つながったわ。
ごん:そう聞くと、ますます西森のうどんを食べてみたかったですね。
H谷:団長確か、西森が店を閉めた後に西森のうどん食べたことがありましたよね。
団長:おー、あれは忘れもしない、いつやったっけ。
H谷:忘れてるじゃないですか。
団長:西森が店を閉めて1年だったか2年だったか3年だったか、まだうどんファンの記憶に“伝説の西森”が残っていたある日のことや。山陽放送の“タヌキの置物”ことI原Dが、「西森の大将が法事でうどんを打つ」いう情報を仕入れてきてな。それで『VOICE21』で番組にしようという話になって。
H谷:そんな情報を入手するのもすごいですけど、それを番組にしてしまう山陽放送もすごいですね。
団長:山陽放送の『VOICE21』という番組は、俺らが怪しい製麺所型うどん屋探訪をしよった時に、地元メディアが無視しとったのに岡山からそれに乗っかって番組展開してくれたという、讃岐うどん巡りブームにおけるテレビ媒体の最大の功労者や。だから、そういうところはタダ者ではなかったんや。それで、法事の日に西森の大将の家にテレビが入ることになって、I原Dから「田尾さんもぜひ来てください」いうてお呼びがかかって行ったんや。
ごん:大将がご自宅でうどんを打ったんですか?
団長:そう。法事に来た人に振る舞ううどんを家で作った。ほんで西森の大将の家に行ったら親戚の人や子供が集まっててザワザワしよって、カメラも最初はその辺を何となく撮りよったんやけど、大将が台所に入って生地を延ばし始めたら、台所周辺の空気がピーンといっぺんに張り詰めてな、みんな物が言えんようになって、大将の動きをじーっと見始めたんや。それをカメラも息を殺して撮影に入った。
ごん:おー。
団長:それから大将がゆっくりゆっくり何度も生地を延ばして、それをたたんで、包丁で手切りでトントンと切って、切った麺を持ち上げて竹の棒にかけて…
H谷:そうですそうです。
団長:麺をかけた棒を流しの前の窓のところにかけて、ほんで手で麺の粉をサーッと落として、竹の棒を下ろして麺を取って、湯の沸いた鍋に入れて茹でて、茹で上がった麺を一旦水で締めて、それから湯だめにして出てきたんや。
H谷:どうでした?
団長:それがや、さっきの張り詰めた空気の後やからものすごく期待しとったんやけど、一口食べたら、「あれ?」って。
H谷:え?
団長:いや、うまかったんぞ。うまかったけど、俺の西森の記憶からしたら、エッジが取れてキレがない感じがして「あれ?」って思ったんよ。もちろん、カメラが撮りよるから顔には出さんよ。そしたらその瞬間、大将が俺に「鍋が小さいけんなあ、角が取れて」って言うてきたんや。大将、絶対に俺の一瞬の微妙な感じに気がついたんやと思う。
H谷:うわー。
団長:あれ、家の鍋が小さいから茹で取るうちに角が取れたんや。
ごん:強い火力でガーッとやらんと、エッジが溶けてなくなるんですよ。だから家でやると、たぶんそこら辺が難しいんかなあという。
団長:鍋が小さいと麺を入れた時に湯の温度がいっぺんに下がって、そこからもう一回沸き上がって茹で上がるまでにエッジが取れてしまうんやろなあ。さらに狭いスペースで麺が踊るから麺同士がこすれ合って角が削られるのもあるだろうし。それが大将はわかっとるから、俺の反応をじっと見よったんかもしれん。
H谷:何か、名人同士の無言のやり取りみたいですね(笑)。
団長:けど、やっぱりさすがに西森の大将やし、こんな珍しいシチュエーションでまさかの西森のうどんやから、みんな感激しながら食べたわ。
ごん:いやー、でもそんなつながりがあったんですね。すごいですね。
H谷:それね、今考えると、その「麺を棒に引っかける」という時点で「なかむら」とつながってるのがわかるんですよ。たぶんあのやり方、中村兄弟の店でしか見ないでしょ。
団長:ほんまや。そこ、「西森」と「なかむら」一緒や。
H谷:一緒なんですよ。
ごん:何か急に「なかむら」に行きたくなりました!
団長:というわけで、今日は笑いどころなく、西森の話で終わりたいと思います。(プチプチプチプチ)
ごん・H谷:最後もプチプチで(笑)。
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