編集 田尾 和俊
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団長:讃岐うどんの歴史にはまだまだ謎が多いわけで。
ごん:まあ昔のことですからね。
団長:マスメディアも発達してないし、ネットもSNSもないから庶民の記録もほとんど残ってないから「推測」とか「推理」をしていくしかない部分が大きいんやけど、誰かが「こういうことだった」とまとめたら、みんなが「そういうことだった」いうて思考停止になることが多い。
ごん:まあ、停止した方が楽ですからね(笑)。
団長:そこで麺通団は常に「“定説”を疑え」という精神で取り組んでいるわけですが。
ごん:そんなものに取り組んでいるとは、今、初めて聞きました。
団長:私も初めて言いました。
H谷:ええから早よ進めてください。
讃岐うどんの謎二題
団長:お便りを頂いております。
たおキントリオの皆さん今晩は。
団長:うーむ。「たお」は俺やけど、「きん」は誰や。
H谷:はははは(笑)。
今年も楽しい放送ありがとうございました。静岡の「ジョルトレーン」と申します。第424回の放送であった「戦前戦後のうどん屋さん情報を集める」というプロジェクトのお話、いたく感動致しました。『うどラヂ』を聴き始めて早や数年、こんなに真っ当な放送がかつてあったでしょうか。
ごん:いやいや(笑)。
さて、団長が採取してきた話の中で、「戦前、家で栽培した小麦を製麺所に持ち込み、それと引き換えに踏んでいないうどんにしてくれる」というものがありました。
団長:あれだ、「押し出し麺があった」という話。「ジョウゴの上みたいなところに捏ねた生地を入れて、上からぎゅーっと押したら下から細長い麺状のものが出てくるのを茹でて食べていた」という話が出てきたやつや。
讃岐うどんのファンになって早や十数年、私は讃岐うどんは踏むのが当たり前田のクラッカーだと思っていましたので、とても新鮮な驚きの事実でした。
団長:オヤジダジャレをうっかり読んでしまいました。下読みをしていないことがバレてしもたが。
ごん:下読みしてたらちゃんと飛ばしてますからね(笑)。
団長:このお便りの元になった「押し出し麺があった」という話を証言してくれたのは高松市の92歳のおばあさんなんやけど、その後、善通寺の「宮川」の大将も「そういうのあったで」って言いよったわ。
ごん:何か、昔はいろんなところでいろんな作り方をしてたのかもしれませんね。
すると、一つの疑問が湧いてきました。それは、「讃岐うどんはいつ、誰が踏み始めたのか?」ということです。日常生活において「踏む」という行為は「麦を踏む」「影を踏む」「地団駄を踏む」など数多く見られますが、食物に関して言えば、踏んで作る物はうどんとワインぐらいしか思い当たりません。
団長:ワインは踏むねえ(笑)。
ごん:でもあれはブドウを潰すためですからね。
しかし、食べ物を踏むなんて親から「バチが当たる」とこっぴどく怒られる行為ですから、積極的に「踏もう」なんて普通は思わないはずです。これはきっと一般人の仕業ではありません。すべからく、偉大な発明はちょっと変わった奇人によって為されることが多いのですが、かき揚げにウスターソースを掛けるという大発見をした団長も同類だとすれば、きっとその答えを知っているはずと期待をしております。
ごん:大発見を間違ってますけどね。
団長:残念ながら「最初にうどんを踏んだ人」はまだ判明していませんが、「足で踏む」という行為で思い出したことがある。
ごん:何でしょう。
団長:昔、タウン情報時代に、“琴平の生き字引”と言われる郷土史家の草薙金四郎さんに取材をしたことがあるんやけど、その時、金四郎さんから「讃岐うどんは足で踏んでいたから皇室に献上できなかったんだ」という話を聞いた。
ごん:なるほど、天皇陛下に対して「足で踏んだものを渡す」いうのが失礼に当たるというわけですね。
団長:そう。それが“お上”から禁じられてたのか、うどんを作る側から遠慮したのか、そのあたりはわからんけど、もしそれが正しい情報なら、相当昔から足で踏んでいたということになる。
H谷:なかなかすごい情報ですね。「いつ頃、誰が」という質問の答えには全くなってないですけど(笑)。
ごん:まあ、讃岐うどんはまだまだ謎が多いということでね。
団長:謎と言えば、以前から言いよるけど、金毘羅の屏風絵。
H谷:「讃岐うどんの歴史」言うたら必ず出てくるやつ。
団長:そうそう。江戸時代のこんぴらの参道の賑わいの様子を描いた屏風絵なんやけど、その中にうどん屋らしき店が3軒見えると。そのうちの1軒は丸い木の鉢みたいな器の中でうどんを捏ねているらしき場面、もう一軒はうどんの生地らしきものを麺棒のような物で延ばしているように見える場面、もう一軒は細長くしたうどん生地を包丁で切っているらしき絵が描かれてあって、それらを根拠に「この頃から香川県はうどんが名物だった」という大きなストーリーになってるけど、あの屏風絵のどこを見ても、うどんを茹でている場面と客がうどんを食べているシーンがないんだ。
ごん:おお。
団長:考えられるのは、表から見えないところで茹でていたのか…
ごん:それでも、もし茹でていたのならどこかに食べているシーンがあってもよさそうなもんですけどね。
団長:あるいは、当時はうどんを茹でずに食っていたのか(笑)。
ごん:あ、なるほど、固いまま食べていたとか…んなアホな(笑)。
団長:あるいは、あそこに描かれている店はそこで食べさせる店ではなくて、みんな生麺を買って帰る店だったのか。
ごん:というか、もしかしたらあれ、うどんじゃないかもしれませんよ。
団長:あ!ほんまや!
H谷:もしそうだとしたら、これは大事件ですよ。
団長:ちなみに琴平は今、あの屏風絵を根拠に「うどん屋発祥の地」を名乗っていますが、この疑問によって「そこにうどんを茹でている場面と、客がうどんを食べている場面がない」という事実について、その理由を説明する必要が出てきました。
H谷:琴平町、えらいもんを突きつけられましたね(笑)。
ごん:まったく迷惑な話です(笑)。
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