編集 田尾 和俊
209
団長:『うどラヂ』はうどん番組だというのに、日本語の表記や言い方に関するお便りが時々来るんよね。
H谷:理由ははっきりしてますよね。
ごん:団長が「日本語の表記や言い方」にうるさいからです(笑)。
団長:すみません。
漢字表記とひらがな表記
団長:あのね。
ごん:何でしょう。
団長:近年。
ごん:はい近年。
団長:何か今日、漫才みたいに合いの手打ってくるのー。
H谷:いやお二人、漫才師ですから。
団長・ごん:なんでやねん。
団長:近年、おそらくここ10年ぐらい、ネットの中やテレビで、これまでひらがな表記だったものが漢字になってるのをかなり目にするんよ。
ごん:と言いますと?
団長:例えば、「○○ということ」を「○○と言う事」って書いてたり、「○○ができる」を「○○が出来る」と書いてたり。
ごん:「出来事」とかは漢字で書きますけどね。
団長:「出来事」とか「上出来」とかいう名詞は漢字で書くけど、動詞の「できる」はひらがなが主流やったんよ。それが近年、漢字の「出来る」をよう見る。それとか「○○のため」を「○○の為」と書いたり。
ごん:それって、何か基準みたいなものはあるんですか?
団長:「漢字表記か、ひらがな表記か」いうのは、「送り仮名」みたいに国語のルールというか正解みたいなものはないんやけど、私が文章を書く時に基準にしてきたのは「新聞の表記」。新聞の表記基準としては、例えば朝日新聞の「新聞用語の手引き」とか共同通信社の「記者ハンドブック」が有名なんやけど、他の新聞も雑誌も大体その2つを基準にしてると思う。
ごん:なるほど。
団長:それでね、気になったから何年か前に『インタレスト』で学生を使って調べたんや。
ごん:単位を人質に調べさせたと(笑)。
団長:ま、そういう側面もあるけど(笑)、新聞と雑誌とテレビでそれぞれ1000ぐらいのサンプルを調べたら、なかなかおもしろい結果が出たぞ。新聞が100%「ひらがな」表記してたものだけ言うと、まず、
「ような・様な」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・100%
TV…ひらがな・91.7%
「たち・達」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・100%
TV…ひらがな・71.4%
「ない・無い」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・99.7%
TV…ひらがな・61.5%
この3つは、新聞と雑誌の紙媒体はほぼ「ひらがな」で、テレビがちょっと漢字表記に崩れ始めている。テレビの表記は画面に出てくるテロップを調べたんやけど、まあ大体このあたりは雑誌もテレビも「新聞に追従している」と言える。ところが、
「こと・事」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・99.9%
TV…ひらがな・17.1%
「ため・為」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・100%
TV…ひらがな・18.2%
「できる・出来る」
新聞…ひらがな・100%
雑誌…ひらがな・96.5%
TV…ひらがな・19.5%
この3つは、新聞と雑誌は圧倒的に「ひらがな」なのに、テレビだけ漢字にダダ崩れしているという表記のトップ3。
ごん:テレビが崩れてきてるのは、何か理由があるんですかね。画面が小さいから漢字を使って文字数を少なくしているとか。
団長:けど、「出来る」も「無い」も漢字にしても文字数は変わらんぞ。あれはたぶん、あんまり新聞表記を習ってないテレビの制作会社の若いもんとかADが原稿をそのままワープロで打って、それを何でもかんでも漢字に変換して、上も「まあええか」いうてそのまま流しているのではないかと俺はニラんでるんやけど(笑)。新聞や雑誌は「編集長」がおるから、その辺がちゃんとチェックされていて表記の崩れがほとんどないのではないかと。
ごん:ワープロは難しい漢字もすぐ変換できるから、ワープロの普及で難しい漢字が入った文章がどんどん多くなっているというのもあるでしょうね。
団長:新聞社の人も雑誌社の人もワープロで原稿書くけど、「これは漢字、これはひらがな」いうてたいてい気をつけてると思う。それがテレビの制作レベルになるとちょっと崩れてきて、さらにネット内の素人さんは編集長もディレクターもいないからダダ崩れになっているという印象がある。
ごん:でも新聞の表記が「正解」というわけではないと。
団長:まあ「今の表記基準」やな。例えば明治時代の新聞は今より断然漢字表記が多かったんやけど、昭和のある時期に「読みやすさを優先して、適度にひらがなを混ぜる」という流れになってきて今日に至っているわけで、それが近年また、おそらくワープロのせいでテレビやネットやSNSを中心に漢字表記が増えてきてるんだと思う。
ごん:まあそれも時代の流れということで。
団長:でも、あえて流れに逆らってでもそういうのに気をつけていただいて、ひらがな表記が主流のところはひらがな表記にしていただくと、私が気持ちよくなる(笑)。
ごん:あっはっは!
団長:あと、とりあえず『うどラヂ』のリスナーには「漢字表記とひらがな表記を新聞に合わせると賢そうに見えるぞ」と言っておきたい。
ごん:てゆーか、何の番組なんですかこれ。
H谷:えーと、「足立区民」さんのお便りの中で『意外と合いますよ』の『意外』が『以外』になってるっていう話からです。
ごん:ただの変換ミスの話からや(笑)。
H谷:はははは(笑)。
バックナンバー
-
#148 「ヤマゼントップ」 (2024.10.29更新) -
#147 「平成こんとん食堂」 (2024.10.22更新) -
#146 「『黄金伝説』のプチ顛末」 (2024.10.15更新) -
#145 「歩き遍路とうどん」 (2024.10.08更新) -
#144 「松村の春」 (2024.10.01更新) -
#143 「5年経過。」 (2024.09.24更新) -
#142 「「はりや」のざるで指を攣る」 (2024.09.17更新) -
#141 「讃岐うどん下さい」 (2024.09.10更新) -
#140 「「逆打ち」と「八十八庵」」 (2024.09.03更新) -
#139 「御大自ら(おんたいみずから)」 (2024.08.27更新) -
#138 「コーラ噴出事件」 (2024.08.20更新) -
#137 「『JOY-U CLUB』に追いつけ追い越せ」 (2024.08.13更新) -
#136 「「ここは池上ではありません」」 (2024.08.06更新) -
#135 「「松井うどん」の「チン」シリーズ」 (2024.07.30更新) -
#134 「語り継ぎたい珠玉のうどん」 (2024.07.23更新) -
#133 「「裏の畑でネギ」の元祖は「西森」だった!」 (2024.07.16更新) -
#132 「県外人の疑問に答えます」 (2024.07.09更新) -
#131 「『超麺通団』文庫化顛末記(後編)」 (2024.07.02更新) -
#130 「『超麺通団』文庫化顛末記(前編)」 (2024.06.25更新) -
#129 「讃岐うどんテーマパーク」 (2024.06.18更新)




















