編集 田尾 和俊
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団長:こうやって振り返ってみると、『うどラヂ』の初期は「がもうのルーツ」とか「なかむらのルーツ」とか「香の香のダシのルーツ」とか、“ルーツもの”が結構多かったんやなあ。
ごん:全部H谷川君が持って来たネタですけどね。
団長:そうなんや。“ルーツもの”といえば今、ネットサイトの「讃岐うどん未来遺産プロジェクト」で「開業ヒストリー」をやっとるけど、実はあれは『うどラヂ』でH谷川君が“ルーツもの”を何個か持ってきたのがきっかけなんや。
ごん:あの大プロジェクトのきっかけになったって、H谷川君、大手柄やんか。
団長:「開業ヒストリー」の企画自体はそれ以前からあったんやけど、取材が大変そうだったんで保留にしとったんや。そしたらH谷川君が『うどラヂ』にちょいちょいルーツネタを持ってくるもんやから、「これ、H谷川君をうまいこと騙してやらしたら、楽してできるんちゃうか」と思って。
H谷:どこが「大手柄」ですか!
団長:というわけで、「讃岐うどん未来遺産プロジェクト」のサイトの中にレジェンド店をはじめ20くらいのうどん店の「開業ヒストリー」が掲載されていますので、ぜひご覧ください。合わせて、新聞記事をベースにした「讃岐うどんの歴史」もかなり詳しく連載中なので、こちらもぜひ。原稿はほぼ全て不肖ワタクシが書いてるので、笑いどころもそれなりにちりばめられております(笑)。
ごん:あと、毒もちょっと吐いてますしね(笑)。
「宮武」のルーツ
H谷:映画『UDON』のモデル店になった、琴平の「宮武」のルーツを大将に聞いてきました。
団長:おー!
H谷:宮武は今の大将のお父さんが初代で、昭和29年に製麺所を開業しました。
団長:昭和29年いうたら俺が生まれる2年前か。おお、あの辺か。
ごん:覚えてないでしょ!
H谷:その当時、玉売りが1玉6円で、先代は自転車にうどん玉を積んで配達してたそうです。
団長:どこへ行きよったん?
H谷:近くの八百屋とか、個人の家とか。
団長:えー?! 個人の家からも頼まれよったんや。
H谷:頼まれてなくても、「うどんいりませんか?」言うて売りにも行きよったそうです。あと、やっぱり粉とうどん玉の交換というのもやってたそうです。
団長:おー、「がもう」の話と一緒や。すると、「がもう」と「宮武」でそういう粉とうどんの交換をやっていたということは、これはもう香川県内で「あった」ということやの。
ごん:それ、「がもう」の話の時は「あった」と思ってなかったということですか?
団長:だってあの時は「がもう」だけの情報やから、「がもう」だけの特殊なやり方だったかもしれんやんか。けど「宮武」もやっとったということは、これはもう。
ごん:なるほど、“2の2”ですからね。
H谷:で、「琴平の宮武」といえば「藤原屋の天ぷら」ですが、その頃、藤原屋さんの先代も同じように自転車に天ぷらを積んで配達しよったそうです。
ごん:それでどっかで遭遇するわけですね。
団長:うわー、ドラマやなあ! 田んぼのあぜ道とかで遭遇してね、こっちから自転車で行きよったら向こうからも自転車が来て、宮武の大将が右に寄ったら藤原屋の大将も右によって、左に寄ったら左によって、「すれ違えんでないか」言うて。
ごん:絶対違うわ!
H谷:まあそういう細かいとこは知りませんけど、とにかく宮武の初代大将と藤原屋の先代は、その当時からの知り合いだそうです。
団長:へー。
H谷:で、その宮武の初代なんですけど、ある有名なうどん屋さんにうどんを教わってました。どこでしょう。
団長:団長にクイズか。ちょっと待てよ。宮武よりもっと古いうどん屋やの。
H谷:ですね。
団長:まず、「白川」は落っこちや。
ごん:「清水屋」も落っこちます。
団長:たぶん「上戸」でもない。
H谷:若手の店ばっかりじゃないですか!
ごん:まずは確実なところから消していかないとね。
H谷:ちなみにその店、団長の書いた『恐るべきさぬきうどん』の第4巻に載ってます。
団長:えーっ、4巻って俺、何書いたっけ。4巻の表紙、何色やったっけ。青やったかな。緑ではなかったよな。緑は鬼門やからな。
ごん:鬼門です。「笑いの文化人講座」の第1巻が緑の表紙で…
団長:あんなに売れた「笑いの文化人講座」やのに、全25巻のうち第1巻だけ山のように在庫が残って、木造2階建ての事務所の2階に積み上げとったら、1階で仕事しよったら天井がたわんできたんや。
松本:はっはっは!
ごん:「緑の亡霊や」言うてましたからね。誰が表紙作ったんですか?
団長:清水さんや(笑)。清水屋さん違うぞ。清水デザインの清水さん。麺通団のオリジナルメンバーの重鎮清水さん。
ごん:でも、その表紙にOK出したんは団長ですからね。
団長:ま、そうやけど、あの頃、とにかく「緑の表紙は売れん」いうてみんな言いよったんよ。
松本:僕、TJ(タウン情報かがわ)の表紙もやらせてもらってた時があるんですけど、編集長の佐伯さんから「緑だけは使ってくれるな」って言われた記憶があります。
団長:けど『恐るべき』の3巻の表紙は緑やったの。誰が作ったんや。
ごん:えーと、本を確認したら、「清水デザイン事務所」って書いてあります。
全員:あっはっは!
団長:で、その4巻に載ってた?
H谷:載ってます。
団長:4巻に載ってる古い店ということは、1巻、2巻に載ってない店やから、S級のレジェンド店ではないということや。で、琴平かあの辺の、きっと周辺や。
H谷:団長、絞れてきてますよ。
ごん:ていうか、団長、自分で書いた店でしょ。それ今、僕らクイズとして推理してますけど、単に団長の記憶力だけの話ですよね。推理で近寄ってきよるというより、あんた、自分で書いた話ですやん。
団長:いや、店は書いたかもしれんけど、宮武の先代がそこでうどんを習ったとかいうエピソードは書いてないから、全く手がかりがないんよ。琴平のあの周辺で、S級ではなくて、しかし古いと。ちょっとほのめかすよ。
H谷:はいはい。
団長:琴平町ではない。
H谷:正解。
団長:よーしよしよし。しかし、丸亀や善通寺や綾歌郡ほどは離れていない。
H谷:さすが団長。
団長:これで完全に仲多度郡に絞られたぞ。これはもう満濃町やな。満濃で、古くて、3巻までに書いてなかった店。
ごん:そんだけ絞り込んでもまだ思い出さんのですか。
団長:わかりました。それでは、ワタクシが意を決して、ラスベガスで黒の13番に1点で腰が抜けるほど10ドルを張った時の勢いでお答えしましょう。
H谷:どうぞ!
団長:「近藤」。
H谷:「山神」です。
ごん:外してますやん!
団長:えー! 「山神」なんか、若い奥さんがやってるやんか。
H谷:あの美人女将さんの、おじいさんです。
団長:うわー! 「山神」はおじいさんがおったんか! けど、「山神」は以前は酒屋しよったんちゃうか?
H谷:その酒屋と同時に、製麺しよったんです。そこに宮武の初代が麺を習いに行ったらしいんです。
団長:なんとかー。ほんだら宮武ファミリーのルーツは山神か。いやー、ますますおもしろくなるH谷川君のうどん屋のルーツ情報やのー。
H谷:でも、最終回です(笑)。
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