編集 田尾 和俊
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団長:今回はテレビ番組でうどん屋にロケに行った時の回。
ごん:麺通団がテレビでうどん屋に行ったのって、ほとんどが全国ネットか県外ローカルの番組ですよね。
団長:ほんまや。言われてみたら、地元の西日本放送も瀬戸内海放送もNHK高松も、うどん屋巡りの番組に出た記憶がないぞ。嫌われとったんやろか(笑)。
H谷:いや、たぶんブームが起こってピークを迎えても、香川の放送局はうどん巡り番組をほとんどやってなかったからですよ。
団長:そうか。あの頃「怪しい製麺所型うどん店巡り」をテレビでやってたの、岡山の山陽放送だけやったからな。
ごん:最初に麺通団がテレビでうどん屋に行ったの、いつでしたっけ。
団長:記録によると、1992年にテレビ東京の『ぐるっと日本三度笠』いう番組で俺が初期の麺通団員何人かを連れて、武田鉄矢さんと一緒に「さか枝」に行ったのが最初。「さか枝」で武田鉄矢さんがテボでうどんを温めるのにまごついとった時に、俺が横から「高松ではこれができんかったら住民票くれんので」いうて注意したという伝説の回や。
ごん:ウソ教えてるじゃないですか!
団長:それから2000年頃までに、まあよっけ呼ばれて出たなあ。
ごん:有名人も何人も一緒にうどん屋巡りましたね。
団長:志垣太郎さんはええ人やったなあ。ほんで、うどんを「スパーッ!」とすすり込むんよ。あれを見て、我々は志垣太郎さんを「うどんのすすり込み方が日本で一番うまい俳優」と認定しました(笑)。あと、毛筆のサインがメチャメチャ達筆。
ごん:鈴木杏樹さんと、「なかむら」とか何軒か行きましたよね。
団長:おー。何軒か回った後、杏樹さんが各店の麺を比べて「同じ白人だけど、アメリカ人とフランス人くらい違う」という名言を残した。
ごん:あと、団長がテレビで一緒にうどん巡りに行った有名人、結構いたでしょ。
団長:エピソードを付けてたら切りがないので名前だけを何となく古い順に列挙すると、渡辺美奈代さん、セイン・カミュさん、藤崎奈々子さん、白井貴子さん、モデルのはなさん、ぐっさん、ジャニーズの風間俊介さん、まるむし商店の磯部っち、野々村真さん、舞の海さん、平野レミさん、料理研究家のケンタローさん、オセロの中島知子さん、アナウンサーの下平さやかさん、福永祐一の奥さんの松尾翠さん、大久保佳代子さん、古閑美保さん、タイムマシーン3号の関太さん、田中みな実さん…あと、思い出さんが。
ごん:コラムニストの勝谷誠彦さんをお忘れです。
団長:あ、勝谷さんはお友達(笑)。まあそれぞれのロケの思い出話は、また機会があればということで。
ホット、オア、ステイ
団長:こないだ。
ごん:はいこないだ。
団長:電話がかかってきたんやけど、その相手が「オーストラリアの国営放送」や言うんよ。ABCって言いよったわ。そこから日本語で電話がかかってきて。
ごん:よかったですね、日本語で。
団長:ほんまに。オーストラリア語だったら“豪語”せないかんとこやった。
ごん:はいはい。
団長:で、話を聞くとね、「オーストラリアの国営放送で讃岐うどんをテーマに特番を作る」と。
ごん:ほうほう。
団長:「讃岐うどんがオーストラリアの小麦粉で作られていて、それがものすごいブームになっている」ということを、オーストラリア国民は誰も知らないと。オーストラリアの小麦を作っている人も、自分ちで作った小麦がどこへ行ってどうなっているのか全く知らないと。
ごん:なるほど。
団長:そこで、「オーストラリアの小麦で作られている讃岐うどんがこんなにブームになっている、ということをレポートしたい」と言うんよ。
ごん:ドキュメンタリーで。
団長:はいー。なかなかええ話やろ?
ごん:まったくです。
団長:で、「つきましては、ちょっとうどん屋さんを案内してください」という。
ごん:やっぱりそうですね(笑)。何か一気に話が軽くなりましたね。
団長:いかなる崇高なテーマも、麺通団のとこに来た瞬間にふわふわと軽くなる(笑)。で、行ってきました。先方のシナリオでは、まず「讃岐うどんのブームというものがどうなっているのか」を撮ると。そこで、俺がオーストラリア人のレポーターと一緒にうどん屋に行って、まあいろいろ説明してくださいというわけや。
ごん:大丈夫ですか? オーストラリア人相手で。
団長:ノープロブレム。俺は相手がオーストラリア人だろうがクロマニヨン人だろうが、いつも通りやるがな。あと、電話で日本語で話しよった女の人がディレクターっぽいポジションの人で、一緒に付いてきて通訳とかやってくれる言うし。
ごん:要するに通訳頼みということですね(笑)。
団長:まあね。ほんで、そのレポーターのオーストラリア人が、ABC・オーストラリア公共放送の北東アジア支局長のシェーンっていうやつや。
H谷:「やつや」って(笑)。
ごん:すでにもう上から目線(笑)。
団長:シェーンは支局長やけど、俺よりたぶん年は下で。
ごん:男性なんですか?
団長:うん。で、9時に坂出のグランドホテルに集合して、そこから「がもう」に行って、そこでいろいろ体験取材をするという段取りで行くことになったんよ。そしたら、たまたまKSBの人にその話をしたら「『スーパーJチャンネル』でそれを取材に行きましょう」という話になって、「オーストラリアのABCが香川で讃岐うどんを取材している様子を香川のKSBが取材する」ということになった。
ごん:取材の取材ですか(笑)。
団長:そう。で、いつものように俺一人では恥ずかしいからキミに電話したら、なんか「マンションの水道管が破裂した」とか、わけのわからん理由で逃げよった。
H谷:さすがごんさん、危険察知能力が素晴らしいですね。
ごん:違いますよ。そうじゃないですよ。すでに仕事の打ち合わせが入ってたんで、そっちを優先しただけですからね。
団長:まあそういうことにしとこう。それで仕方なく麺通団員S原に電話したら「行けます」言うから、とりあえずS原と2人で朝の9時に坂出グランドホテルに行ったわけよ。そこでオーストラリアのスタッフとKSBの本庄さんとカメラの樋口さんと合流したら、そこに「うどんタクシー」が来てて…
ごん:何かドキュメンタリーでなくて、バラエティの匂いがしてきましたよ(笑)。
団長:キミ、ほんまにええ嗅覚しとるなあ(笑)。それでな、「まず坂出駅でうどんタクシーに乗るところから撮りたいんで、これからみんなで坂出駅に行きます」と。で、「駅前でシェーンが立ってますから、田尾さん、駅から出てきて“ハーイ、シェーン!”と言ってシェーンと握手してください」って。
ごん:あっはっは! いきなり小芝居させられてますやん!
H谷 オーストラリアのテレビ、日本よりベタベタですね(笑)。
団長:けど、ここまできてゴネるわけにもいかんから、俺、一旦坂出駅の構内に入って、そこから出てきて手を挙げて「ヘイ、シェーン」言うて握手したがな。周りに一般客もおるというのに。
ごん:ま、しょうがないですわな(笑)。
団長:ほんでそこからうどんタクシーに乗って「がもう」に行ったんやけど、がもうに行くアプローチが4本あるやろ? カーブミラーのある脱輪しそうな角から入って行く一番ポピュラーな道と、コンビニの方から入って行く道と、五色台病院方面の田んぼの間から入って行く道と、葬祭場の横みたいな所から田んぼの間に道に入って行くやつ。
H谷:ありますね。
団長:その4つのアプローチを紹介したら、カメラの人が「田んぼの横から入ってくる道がええ」って言うから、あの道をうどんタクシーで、俺とシェーンが後部座席に乗って、がもうの真横にスーッと出てきたんよ。そしたら、もうすでにお客さんが一杯で、ほとんど全員がこっちに注目しとるがな。
ごん:そりゃそうでしょう。あんな至近距離の所に上にうどんの丼載せた「うどんタクシー」がニューッと出てくるんですから(笑)。
団長:しかも、最初はみんな「うわ、うどんタクシーが来たわ」みたいな反応やったのが、タクシーの中を見たら「田尾さんが乗っとる!」いうて、ケータイが3つも4つもこっち向いて。一眼レフ構えて写真撮りよる人までおったが。
ごん:「さすが団長、うどんタクシーで横付けや!」みたいな(笑)。
団長:するかいそんなこと! けど、あとでS原に聞いたら、「お客さんがひそひそと『うわー、田尾さんや。やっぱりうどんタクシーで来るんや』って言ってましたよ」って。
ごん:あっはっは!
団長:ほんでS原に「ちゃんと『撮影ですから仕方なくやらされてるんです』って言うたやろな」って聞いたら、「いや、『なんか結構あれで来よるみたいですよ』って答えときました」って。こらーーー!!
H谷:さすがS原さんですね(笑)。
団長:で、とりあえず「がもう」に入って、シェーンに俺がいろいろ説明することになったんや。けど、シェーンは2年もこっちの支局でおる言いよったのに、日本語はさっぱりなんや。ほんでこっちも英語はまるでダメやけど、一応知ってる単語ぐらいは並べてやろうと思って、店に入ってまず「オーダー、アットヒアー」言うた。
ごん:「ここで注文しろ」とね(笑)。
団長:ほんで、上にメニューを貼ってるのを指差して、「ザッツメニュー」。
ごん:いい感じですよ(笑)。
団長:「ベリーシンプル」。
ごん:はいはい。
団長:続いて「小」を指差して、「スモール」。
H谷:あははは(笑)。
団長:続いて「大」を指して、「ビッグ」。
ごん:はいな。
団長:さらに「特大」を指して「アーンド、スペシャルビッグ!」
H谷:あはははは(笑)。
団長:「オンリー、ディス、スリーパターンズ」。
ごん:いやー、実にわかりやすい(笑)。
団長:まあここまでは楽勝や。しかしその後がめんどいがな。注文をする時に「大、小」の後に「熱いの」と「そのまま」のどっちか申告せないかんやん。まず、「熱いの」は「ホット」。これは簡単やけど、「そのまま」は何や?
ごん:「そのまま」か…何でしょうね。
団長:仕方ないから通訳の人に「“そのまま”って、何て言ったらいいんですか?」って聞いたら、「何て言ったらいいんでしょうね」言うねん。そやから、俺は頭の中で必死で単語を探して、何とかひねり出して、「テルザマスター、ホット、オア、ステイ」言うたら、通訳の人とシェーンにメチャメチャ受けた!(笑)
ごん:「ステイ」って、ポーカーの「そのまま」ですやん!
団長:通訳の人が「いやー、その発想はなかったです(笑)」いうて、あの日一番受けたけど、未だに何で受けたんかようわからん(笑)。
ごん:いやー、苦境に陥っても爪痕残しますねえ!(笑)
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