麺通団のうどラヂテキスト版 編集 田尾 和俊

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団長:こないだ。

ごん:はいこないだ。

団長:『超麺通団・団長の事件簿』いうおもろい本を見つけてな。

ごん:あんたが書いた本ですがな!

団長:ま、話の流れでさりげなく宣伝しといて。

ごん:流れのないところに唐突すぎてあからさまですけど。まあ確かに団長は間違いなく、僕らよりはいろんな事件に見舞われてきてますからね。

H谷:しょっちゅうネタの神が降りてきてますから。

団長:というわけで、『うどラヂ』史上でも1、2を争う「団長の事件簿」の回を、紹介したくないけど紹介します。

団長、「メロン詐欺事件」に巻き込まれる。

団長:メロンがまだ届かんのよ。

ごん:あっはっは! 寸借ですよ。あんなの誰が聞いても典型的な寸借詐欺ですよ(笑)。

団長:けど、正確にはまだ「いい話」になるかもしれんのぞ。

ごん:絶対ならないと思いますけど、まあとりあえずリスナーの皆さんに、何があったか正直に説明してあげてください。

団長:しょうがないな。こないだの朝、7時半頃に家を出て、大学に向かって高松西インターから高速に乗ったわけや。

ごん:いつものルーティーンですね。

団長:ところが、このところ仕事が忙しくて睡眠不足気味だったもんで、このまま行って居眠り運転なんかしたらいかんと思ってね、8時過ぎに府中湖パーキングエリアに入って、リポビタンDを1本買うてカーッと飲んだわけだ。

ごん:なるほど、朝から判断力が鈍ってたことをアピールしてるわけですね。でもリポビタンじゃ眠気は飛ばんでしょ。

団長:飛ばん。俺は目だけ開けるんなら「眠眠打破」か「オールP」、全身を起こすなら「ユンケル」か「ゼナ」の高いやつ派なんやけど、ボーッとしとって無意識にリポビタン買うてしもたんや。ほんで車に帰ってきよったら、「ちょっとすみません」言うて声を掛けられた。

ごん:さあ皆さん、主役の登場ですよ(笑)。

団長:見たら、ちっちゃい小太りの、何かうだつの上がらんケーシー高峰みたいなおっちゃんが、もっと正確に言うと、ケーシー高峰と、ニコホンの看板の丸い顔のおっちゃんおるやんか。あれを合わせたみたいなおっちゃんが声を掛けてきたんや。

ごん:はいはい。

団長:ほんで聞くところによると、「今治に住んでます」と。ほんで、会社から突然転勤を命じられて、あまりに腹が立ったから昨日会社を休んで岡山の児島に行って酒を飲みよったんやて。

ごん:なるほど、そういうストーリーで来ましたか。まあウソですけどね(笑)。

団長:それが2軒、3軒行っきょるうちに夜中の3時になって、ふと気がついたら財布を落としとったって。

ごん:あら大変。ウソですけどね(笑)。

団長:ほんでこれから今治まで帰らないかんのに、そこからヒッチハイクするはめになったらしい。で、「私、生まれて初めてヒッチハイクすることになって、どうやっていいのかわからないままその辺で走っている車に『四国に渡りたい』言うて頼んで、やっとのことで四国に来たんです」と。

ごん:はいはい。

団長:ほんで乗せてくれた人に坂出あたりで聞いたら、「今治まで帰るんなら、こんな下道より高速のサービスエリアで拾ったら一気に松山に行く人がおるで」と言われたんで、府中湖で下ろしてもらって、そこから歩いて府中湖パーキングエリアまで来たらしい。国道からパーキングエリアまで、何キロかあるだろ? しかも最後は山道の登りで大変やぞ。

ごん:まあ大変ですわな。ウソですけど。

団長:ほんで見たらそのおっちゃん、髪を乱してワイシャツの袖をまくり上げて汗だくなんや。それ見たら、ここまでは誰でも信用するやろ?

ごん:いやいや、どうですかね。

H谷:すでに怪しい匂いがプンプンしますけどね(笑)。

団長:君らはな、結果を知った上で話を聞きよるだけやからそう見えるんや。現場であのおっちゃんの悲しそうな、子犬のような目を見てみ?

ごん:いや、それ以前に、そもそもそのおっちゃんは俺たちには絶対声掛けんと思いますね。

団長:何で?

ごん:「こいつらは絶対金出さん!」いうのわかっとるから(笑)。

H谷:ええええ。やっぱプロは、何かお金を持ってそうな人にしか声を掛けん。

ごん:ボルボやしね。

団長:ほなまあ、そこは百歩譲ってそういうことにしといて、ほんで「乗せてくれんやろか?」言うて頼まれたわけや。「どちらに行かれるんですか?」って言われたから「善通寺です」言うたら、「善通寺でも構いません。ちょっとでも今治に近づいたらいいです。インター下りたところで降ろしてくれたら、そこからまた11号線まで歩いてヒッチハイクします」言うから、「まあ乗せていってあげるぐらいならええわ」と思って乗せてあげたんや。

ごん:あ~あ、乗せちゃったよ(笑)。

団長:ほんだら「ありがとうございます、本当にありがとうございます」言うてな、「人はここまで他人にお礼言えるか?」いうぐらいお礼言われて、さらに「帰ったらメロン送りますから」って言うてきたんだ。

ごん:まあまあ言うんはタダやからな。

団長:そこから車で走りながら10分足らずの間に、何回「メロン送ります」って言われたか。「静岡のメロン、本当においしいですから。2つ送りますから住所を教えてください」って。しょうがないから、現住所は危ないから以前住んどったマンションの住所を教えたがな。

ごん:あんたも疑ってますやん!

団長:けどあのマンション、もしメロンが届いたら俺んとこに連絡が来るようになっとるからな。

H谷:なるほど、疑っててもメロンだけは手に入る可能性を残して(笑)。

団長:常に可能性は残しておくのがビジネスマンの鉄則や。

ごん:それ以前に、怪しい話には乗らないのが人としての鉄則でしょ!

団長:で、いよいよ善通寺インターの下り口に差しかかったら、おっちゃんが「もしよろしければ、JRの駅まで送ってくれませんか?」って言うてきたんや。

ごん:いよいよ、「軒を貸したら主屋に入って」きましたね。

団長:ラクダか(笑)。で、それを聞いて俺は少し冷静になって、「このおっちゃん、財布落としてるから善通寺の駅で降りても切符買えんのちゃうか?」と思って、「お金ないでしょ? 切符買えませんよ」って言うたんや。そしたら、「駅でまたヒッチハイクで車を拾います」言うんかと思ったら、「いやもうほんとに、もしよろしければ、電車賃だけでも貸して頂けたら」って。

H谷:来ましたね(笑)。

ごん:おっちゃん、車の中で必死でお金をもらう作戦考えよったんでしょうね(笑)。

団長:そこで俺は決心したね。「善通寺から今治までまあ2000円か3000円ぐらいやろし、人助けや思って貸してあげよう。というか、返ってこんでもええからあげよう」と。

H谷:えーっ! 寸借詐欺を疑ってるのに貸してあげたんですか!

団長:まだ2%ぐらい、ほんまに困っとるおっちゃんかもしれんやんか。しかも、ここで人助けしとったら、地獄に落ちた時、俺にだけクモの糸が下りてきて天国に行けるかもしれん。

ごん:「地獄に落ちる」という前提は正しいと思いますけど、「3000円で天国に救われよう」というのはムシのいい話です。

団長:そこで、財布の中を改めたんや。そしたら、財布に1万円札しかない。さっきのリポビタンのせいで1000円札がなくなってたんや。

ごん:それ、最初から1000円札1枚しか持ってなかったんじゃないですか。

団長:そうなんよ。ほんで一瞬の間に頭の中で、「もうこれ、なくなってもええ」と思って。

H谷:絶対思えませんよね。

ごん:どう考えても思えん。俺だったら「ない」言うて断るか、最悪でも1万円札で今治までの切符買ってあげて、その切符だけ渡すよな。

団長:その手があったか!

ごん:ほんで、切符を買ってあげた時のおっちゃんのトークを聞いてみたいよね。一体どういうストーリーを作るか(笑)。

H谷:聞きたいですね(笑)。

団長:くそー、そこに気がつかんかった。ただまあ、ここに半分ぐらい「人助けをしている」という自己満足みたいなのも出てきてね、ほんで一応「貸してあげる」ということで、1万円渡したんや。これで、クモの糸の太さが3倍になるぞと。

ごん:なるかい!

団長:そしたらおっちゃんにまたものすごくお礼を言われて、何回も「メロン送りますから」いうて繰り返されたんやけど、去り際に「ほな気いつけて。私、このまま四国学院に行きますから」言うたら、おっちゃんが「あ、四国学院はそこをまっすぐ行ったらありますから」って。知っとるわ!

ごん:あっはっは!

団長:ま、そんなことがあってから本日、2週間ぐらい経ってますが、まだ、メロンは届いておりません。

ごん:一生届かない方に100円。

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