編集 田尾 和俊
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団長:「うどん発祥の地」については諸説ありますが、今回は「福岡発祥説」が出てきた回を、多少の加筆を交えて再現しましょう。
ごん:「加筆」の時点で「再現」とは言えませんけどね(笑)。
団長:そこはそれ、「オンエアでカットされた部分や補足情報を加えて読み物として充実させる」というのがこの「テキスト版」の付加価値だということで、無理やりご了承いただくことにしよう(笑)。
うどん発祥の地
団長:オープニングお便りです。
ごん:「ネタがない時に番組のオープニングに読む」というだけの意味ですけどね。
団長、麺通団の皆様、いつも楽しいポッドキャストありがとうございます。シカゴ在住のパン吉と申します。
ごん:おおっ! シカゴ!
サンフランシスコのマフィンさんが帰国されたようですので、海外で『うどラヂ』を聴いている者としてはその存在を示さねばと、ペンを取った次第です。
ごん:いや、そんなとこで頑張らんでえもええから(笑)。
団長:マフィンさんが日本に帰ってきたということで、海外のリスナーはこないだグリンデルワルトに行ってくれたスイスのチューリッヒの山内さんだけになったと思っていたら、2人目が発見されました。シカゴの、パン?さん。
ごん:うどんでなくてパンですけど(笑)。
さて、うどんの起源は「お大師様が中国から持ち帰ったもの」という説があるようですが、以前帰国した際に福岡で泊まったホテルで見つけたパンフに、「うどん・そば発祥の地、承天寺。博多駅から徒歩7分」という記述を見つけました。博多を代表する祭りである「山笠」の祖として知られる「聖一国師(しょういちこくし)」によって1242年に開かれた寺院ですが、その聖一国師がうどん、そば、羊羹、饅頭の製法を最初に広めたことから、承天寺、ひいては福岡がうどんの発祥の地ともなっているという説明書きがありました。うどんは中国から九州を通ってもたらされたものなんでしょうか。
団長:すなわち、福岡が承天寺の「聖一国師」を根拠に「うどん発祥の地だ」と言い張っているのは本当か? と。
ごん:「本当か?」と問われても、我々に答えを出すすべはありませんからね。
団長:とりあえず香川側の「伝説」だけを紹介すると、これまで番組でも何回か触れたけど、まず香川県には「空海が唐から持って帰ってきた『混飩(こんとん)』という食べ物がうどんの原型だ」という言い伝えがあります。
ごん:ありますね。
団長:まあ「見たんか」と言われたら誰も見てないし文献にも残ってないけど、香川県の人は「何かよくわからないことがあったら全部空海のせいにしとったら安心する」という県民性があるから(笑)、一応この話は香川ではそれなりに定着しているわけです。
ごん:確かに。
団長:それから、平成に入って綾南町(現綾川町)が「空海の甥の智泉大徳がその『混飩』を切り麺の形にして母に食べさせた」という言い伝えを持ち出して、智泉大徳の生誕地が綾南町であることから「讃岐うどん発祥の地」と名乗り出して今日に至っていると。
ごん:基本的には、香川ではそういう話になっています。
団長:ちなみに、「空海持ち帰り説」が香川に定着する前は「奈良時代に中国から渡来した唐菓子がうどんの原型だ」という説が四国新聞にも何回か出てきていますが、それも含めて、これが「うどんの起源」に関する香川側の“状況証拠”です。
ごん:この件に関しては“状況証拠”しかないですからね。
団長:つまり、どの説にも確たる証拠がないから「言うたもん勝ち」みたいなところがあるわけですが、ファクトベースをモットーとする麺通団としては、一応、わかっていることだけを確認しておきます。まず、空海は平安時代の人で、遣唐使で唐に渡って帰ってきたのが806年。智泉大徳も空海の甥やから同じ平安時代の人で、825年没とある。一方の聖一国師は鎌倉時代の人で、中国に修行に行って帰って来たのが1241年とあるから、時代的には「空海や智泉大徳の方が400年以上早い」という事実はとりあえず押さえといてください。
ごん:なるほど。時代で言えば福岡の「聖一国師」より香川の「空海・智泉」の方が断然古いと。
団長:ただ、私の推測としては、もし万が一「空海が中国からうどんの原型を持って帰ってきた」というのが正しかったとしても、「道筋からしたら、たぶん福岡の方が早いやろな」と(笑)。
ごん:中国から帰ってきたら福岡に先に着きますからね(笑)。
団長:空海が中国からそんな珍しい食べ物を持って帰ってきたんなら、まず最初に上陸した福岡で「こんなんありますけど」言うて伝えたという可能性は十分ある。事実、唐から帰ってきた空海は博多に上陸して、そのまま太宰府に何年か滞在してお寺を2つも建てたと書かれているから、その間、「うどんの原型の食べ物」をずっと秘密にしとったとは考えにくい。
ごん:ということは、「空海持ち帰り説」をとったとしても、発祥となると「福岡発祥説」が再浮上するわけですか!
団長:一瞬、そう思ったんや。ところが昨年、あの私の尊敬する伝承料理研究家の奥村先生が「うどんの発祥は中世の京都の禅寺である」という論文を発表した。
ごん:ほう!
団長:それを読んだら、さすが奥村先生。綿密に資料を集めてファクトベースでかなり論理的な仮説を立てていて、香川で「空海説」や「智泉大徳説」を語っている文化人の方々とは研究レベルが段違いやから、俺はいっぺんに奥村先生の「中世京都の禅寺説」に傾いたね。
ごん:すると、「福岡発祥説」が吹っ飛んだ。
団長:一瞬、「福岡発祥説」も「空海・智泉大徳説」も消えたと思ったんや。ところが、その後調べてみたら、「福岡発祥説」の根拠になっとる「聖一国師」は、京都の禅寺で活躍しとったことが発覚した。
ごん:何と! どうしましょう、これ!
団長:どうもしない(笑)。ま、麺通団の公式見解としては、いろんなところで「うちが発祥の地だ」とか言い合いながら遊んでいただければと思います。全国に「○○発祥の地」というのは数多(あまた)ありますが、「発祥の地」で地域が経済的に活性化して豊かになったところはほとんどないと思いますので、私としてはあくまでも「遊んでいただければ」というスタンスで(笑)。
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